空調分野の売上高世界NO.1(※1)のダイキン。今、同社は単なる「モノづくり企業」から、ITを駆使して社会課題を解決する「ソリューション企業」へと大きな変貌を遂げようとしています。今回お話を伺ったのは、空調生産本部のIoTシステムを開発するグループのグループリーダーを務める北村拓也さんです。大手SIer、システムコンサルを経てダイキンに入社した北村さんは、現在、空調機のデータを用いた「空調IoTソリューション事業」の技術責任者として、グローバルなプラットフォーム開発を牽引しています。
(※1)出典:富士経済「グローバル家電市場調査 2026」調べ(グローバル空調メーカーの空調機器事業売り上げランキング2024年実績)
キャリアの転換点:なぜ「サポート役」から「事業の主役」へ?
──まずは、北村さんの歩みとダイキンに入社した経緯を教えてください。
北村:私は新卒で大手SIerに入社し、基幹システムやプラットフォーム開発に従事しました。その後、ベンチャーのシステムコンサルを経て、ダイキンへ転職しました。コンサル時代は「お客様のシステム」を支援する立場でしたが、次第に「自分自身が主役となって、ITを使ったビジネスそのものを作り上げたい」という思いが強くなりました。
支援者ではなく、自らが製品に責任を持ち、ITを核に事業を回していく。その「手触り感」を求めて、事業会社であるダイキンを選びました。

北村 拓也(キタムラ タクヤ):ダイキン工業株式会社 空調生産本部 グループリーダー
新卒で大手システムインテグレーターに入社。基幹システム開発向けプラットフォーム開発に従事。その後、ベンチャーのシステムコンサルティング会社を経て、ダイキン工業に入社。空調IoTサービス、空調IoTプラットフォームの開発責任者に従事。
空調を「売って終わり」にしない。ダイキンが挑むIoT事業の全貌
──ダイキンが注力している「ソリューション事業」とは、どのようなものですか?
北村:単に機器を売るだけでなく、「機器をインターネットに繋ぎ、データを用いて課題を解決する」モデルへの転換です。背景には3つの深刻な社会課題があります。
●エネルギー問題:ビルのエネルギー消費の約半分は空調が占めています。運転効率をITで最適化できれば、地球全体の環境負荷軽減に直結します。
●人手不足:据え付けや修理といった「人の手」に頼る業務を、IoTによる遠隔監視や自動点検で効率化することが不可欠です。
●空気の安心:目に見えない空気をITで見える化し、最適にコントロールすることは、興味を持たれる方が多いです。
──具体的にはどのようなサービスを展開されていますか?
北村:代表的なものは2つです。1つは業務用空調向けのクラウド型監視・制御サービス「DK-CONNECT」。設備管理者が常駐しなくても、離れた場所から複数の物件を一括管理できる仕組みです。少子高齢化の進む日本では、小規模物件すべてに管理人を置くことは難しいこともあり、お客様のニーズに応えています。もう1つは、家庭用の「Daikin Smart APP」。外出先からの操作やGPSと連動して、帰宅前に部屋を冷やすといった体験を提供しています。
500万台のデータを扱う:エンジニアをうならせる技術課題
──開発には、どのような技術的な難しさがあるのでしょうか。
北村:最大の挑戦は「規模感」です。ダイキンは世界一のシェアを持つため、特定の地域だけで500万台以上の空調機が稼働しています。これら全てをクラウドに繋ぎ、1分間隔で上がってくる膨大なデータを処理しなければなりません。同時アクセスは9万人に達します。
──この規模にどう対応しているのですか?
北村:「フルマネージドサービス」と「サーバーレスアーキテクチャ」の徹底利用という方針を採りました。人が手動でサーバーを増強する従来のやり方では、この規模の拡大には耐えられません。驚かれるかもしれませんが、ダイキンはこの決断を8年ほど前に行いました。世界一のストックを支えるにはこの先進技術しかないと、いち早く舵を切った先見性が今の強みです。
ゼロから道を切り拓く:機械メーカーにおける情報系エンジニアの葛藤と大きなやりがい
──伝統的な機械メーカーでIT技術を導入する際、苦労はありましたか?
北村:入社当時は、社内にソフトウエア開発の経験を蓄積している真っ最中でした。前例がないため、技術選定から「どう利益が出るのか」という事業性まで、すべてを自分たちでゼロから考え、経営層に提案する必要がありました。
──それは高いハードルですが、面白いことができているのですね。
北村:ええ。それが事業会社で働くエンジニアの醍醐味です。IT専門の会社のように仕組みが決まっていないからこそ、本当に良いと思うものを熱意を持って提案し、形にできる。「情報系のことは君たちに任せる」と信頼を得て、真っさらなキャンバスに絵を描く感覚は、何物にも代えがたい喜びです。
また、コスト意識も磨かれました。家庭用エアコンだと1台数万円です。その家庭用エアコンに付随するサービスとして、いかにランニングコストを抑えつつ世界規模のシステムを作るか。「技術」と「ビジネス」のシビアなバランスを追求し、何度も技術開発をやり直しながらも事業を作っていく経験は、とてもやりがいがありました。

グローバルへの挑戦:世界中を飛び回り、現地の最適解を探る
──グローバル展開における難しさや面白さはどこにありますか。
北村:地域によって気候もライフスタイルも異なるため、求められる機能が全く違います。私は実際にアメリカやヨーロッパなどの現地へ赴き、各国の販売会社のキーパーソンと「その地域の困りごとは何か」を議論します。
グローバルを飛び回りながら各地域のニーズを汲(く)み取り、1つの共通プラットフォームとしてまとめ上げる。こうしたスケールの大きな経験は、世界中に拠点を持つダイキンだからこそできることです。英語力も大切ですが、それ以上に「技術で課題を解決したい」という熱意があれば、言葉の壁を越えて世界中の仲間と協力し合えます。
0→1フェーズはまだ終わっていない
──最後に、これからキャリアを考える学生へメッセージをお願いします。
北村:ダイキンでのIoT開発は、土台はできましたが「0→1」のフェーズは終わっていません。新しい製品・コンテンツラインアップの拡充やAIの活用など、常に新しい挑戦が続く現場です。
製造業というリアルな接点を持つ企業でITを活用することは、現実世界をより良くしていく手応えをダイレクトに感じられるチャンスです。自分の書いたコードが、世界中の500万台の空調機を動かし、地球のエネルギー問題を解決していく。そんな手触り感のあるエンジニアとしての挑戦を、ぜひダイキンで経験してほしいと思います。皆さんの挑戦を楽しみにしています。

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