「池田さんって、すごく楽しそうに働いてますよね」
いつのころからだろうか。周りの同僚からそう言われるようになったのは。社会人になって8年、それはワンキャリアに転職した今でも変わらない。
言われて悪い気はしないものの、何とも不思議な気分だ。確かに、自分が興味を持っているテーマについて記事を書くときは楽しい。だが、それだけが仕事の全てではないし、努めて楽しく振る舞おうとしているわけでもないのに。
とはいえ、自分自身も会社に入ったばかりのころは、お世辞にも「仕事が楽しい」と思える瞬間はあまりなかった。
慣れないことばかりで、遅々として進まない原稿。次々と迫る締め切り。ミスを恐れ、上司からの『カミナリ』におびえ続ける日もあった。記事を書くこと自体がつまらなくなり、イヤになりかけたこともある。
それでも「インタビュー」は嫌いにならなかった。人の話を聞くのは好きだったからだ。奇麗事じゃない、リアルな、時にはドロドロした……そんな話を聞いているときは、時間も忘れてしまうほど楽しい。この点では「遊んでいる」と言っても過言ではないだろう(その後、記事にまとめることを考えて少し憂鬱(ゆううつ)になる)。
そんな自分を認め、その方向に進む自信が持てるようになってから、アウトプットの質も変わっただろうし、仕事に対する見方も変わった。今では、冒頭のように言われたらこう答えている。「いえいえ、遊んでいるだけですから」。
「仕事」と「遊び」は、もはや相反する概念ではない
ワンキャリ編集部が総力を挙げてお届けする特集、7月のテーマは「遊びとビジネス」。
この両者は相反する概念として捉えられるのが普通ですが、ビジネスで成功を収めるトップランナーの中には、本業と同様、あるいはそれ以上にゲームやスポーツなどの「遊び」に熱狂する人も少なくありません。
また、「好きなことで生きていく」という言葉が流行したように、遊びと仕事の境界線がなくなりつつあるのも事実。
働き方が多様になってきた今日では、「遊び」を職業とする人が登場したり、仕事と生活を切り離さず考える「ワークアズライフ」思考が提唱されたりといったトレンドもあります。
今回の特集では、遊びと仕事(ビジネス)との関係性の変化を、さまざまな角度から浮き彫りにする4本の記事をご用意しました。
【7月23日(火)公開】:ベストセラー連発のスター編集者が、なぜ歌手活動にのめり込むのか。幻冬舎・箕輪厚介氏に聞く、「遊ぶように働くため」の「型」と「死ぬこと以外かすり傷」の真意
敏腕編集者としてベストセラーを連発する傍ら、1,000人を超えるメンバーを擁するオンラインサロン「箕輪編集室」の運営や、CAMPFIREと幻冬舎の共同出資会社であるエクソダスの取締役、「箕輪★狂介」名義での歌手活動など、幅広い領域で「遊ぶ」ように働く箕輪厚介さん。「好き」を見いだし、突き抜けるためのキャリア論を語っていただきました。
【7月24日(水)公開】:インターネットは「遊び」をビジネスにした。「意識低い系」バンドマンだった赤川隼一が、DeNA歴代最年少執行役員、急成長スタートアップの経営者になるまで
ゲーム実況アプリ「Mirrativ」を運営する、株式会社ミラティブ代表の赤川隼一さん。エンタメビジネスを手がける彼は、インターネットの普及によって「好きなことをやっている人が強い」という時代がやってきたと話します。
【7月25日(木)公開】:日本で初めて「おふざけ」を仕事にした男に、『遊び』の感覚はなかった。シモダテツヤが語る、『やりたいことを引き寄せる』法則
Webメディア「オモコロ」の運営会社、バーグハンバーグバーグの創業者であり、2019年1月に代表取締役社長を退任した、シモダテツヤさん。日本で初めて「おふざけ」を仕事にしたとも言える立場の方ですが、本人いわく「遊び」という感覚はなかったのだとか。その理由はどこにあるのでしょうか。
【7月26日(金)公開】:仕事とプライベートの境目は必要ない?「遊び学」研究者が考える、遊ぶように仕事をする方法
東京学芸大学副学長、「遊び学」提唱者の松田恵示先生は、「人類の文明を作り上げたのは遊びの精神である」という大胆な仮説を唱えています。遊ぶように仕事をするためにはどうすれば良いか、アカデミックな視点からお話いただきます。
多くのビジネスマンが軽視しているかもしれない「遊び」。しかし、良いキャリアを積みたいビジネスマンこそ、遊びに対して真剣に考えるべきではないでしょうか。
仕事なんだから◯◯、遊びなんだから◯◯、そんな言葉が消え、特集で取り上げた方々のように、「遊ぶように働く人」が増えてほしいと願っています。
(Photo:ra2studio/Shutterstock.com)
【特集:「遊び」とビジネス】
<幻冬舎 箕輪厚介氏>
・ベストセラー連発のスター編集者が、歌手活動にのめり込む理由
<ミラティブ 赤川隼一氏>
・「意識低い系」バンドマンが、急成長スタートアップの経営者になるまで
<シモダテツヤ氏>
・日本で初めて「おふざけ」を仕事にした男に、『遊び』の感覚はなかった
<東京学芸大学 松田恵示氏>
・「遊び学」研究者が考える、遊ぶように仕事をする方法