こんにちは、ワンキャリ編集部トイアンナです。
「スタンフォードを出た彼女が、日本のマッキンゼー、ボストン コンサルティング グループを選んだ3つの理由」の記事で少し触れられているように、外資系企業の内定者・社員は「優秀な人材がそろう」「英語ができる」「成果主義の代わりに高収入」といったイメージを抱かれることが多くあります。しかし実際に社員に話を聞いてみると「そんなことはない」という声も多数。
今回は外資系企業の真実へ、「収入・実力主義・資質」の3点から迫りたいと思います。
真実1:外資系だから高収入とは限らない
外資系でまず思い浮かぶのが、六本木の高級バーラウンジでおもむろに英語会議に入る……といったバブリーな会社員の姿。しかし、近年は外資系投資銀行を筆頭に給与が下落傾向にあります。
リーマン・ショック前なら、外銀は、30歳で1億円プレーヤーも目ではありませんでした。しかし現在は30歳で年収2000万円台まで下落(※1)。2時間睡眠でしのぎを削る対価としては、安すぎると感じる人もいるでしょう。
外資系コンサルタントも初年俸は550万円、30歳で700~1000万円程度です(※2)。会社や職種、役職などによるバラつきが大きいという特徴があります。ただ、平均年収では商社、銀行やマスメディアと同レベル。福利厚生がないため、家賃補助などが充実した日系企業に就職するよりも所得が低い結果に。
特に、外資系メーカーではボーナス込みで初年俸350万円前後、30歳で800万円台と、大手日系メーカーと大差ない給与水準です。一般的に外資系企業は少数精鋭のため、1人あたりの仕事量は日系よりも多い。それを鑑みると、仕事量に対して給与が少ないという見方ができます。
(※1)参考:ニコニコニュース「外資系企業の荒唐無稽――年収5億、社員専用スタバ、週10時間睡眠」
(※2)参考:外資就活日記「【コラム】内資/外資系コンサルタントのお給料事情」
真実2:外資系だからといって、仕事ができるわけではない
外資系企業といえば、毎年リストラがあり、仕事ができる人だけ生き残るといった「実力主義」を想像する就活生も多いと思います。しかしリストラを行うのは、一部の企業に限定されます。
具体的には、A.T.カーニーやLVMHグループが、ほとんどリストラをしないことで知られています。時間を掛けて新卒を育てる文化が根付いていて、過去にリストラを断行したことはほとんどありません。その反面で、優秀な人がヘッドハントされて抜けていってしまうという課題を抱えています。
一方で外資系投資銀行、その他一部アメリカ系企業は断続的にリストラを行う傾向にあります。
業績が下位の社員はPIP(Performance Improvement Program)の研修プログラムの一環として、実質的に退職を促す契約書へサインさせられることもあります。こう書くと、外銀とアメリカ企業に優秀な人材が残りやすい環境であるかのように見えるかもしれません。
しかし、仕事をテストの点数のように完全な数字で評価するのは難しいものです。外資系企業では直属の上司が人事権を握ることが多く、結局は上司に気に入られている社員や、社風にフィットしている社員が残りやすくなります。「外資こそ、社内政治が大事」とはとある外資系投資銀行の社員が言った言葉。
このように、リストラを生き抜いたからといって「優秀」とは限らないのです。
真実3:外資系企業に内定する人は、日系で活躍できない
外資系企業に内定する学生は、下記の特性を持つ傾向にあります。
・強いリーダーシップ
・論理性
・目的を達成する柔軟な思考力
・動きながら考える迅速さ
これらが「優秀さ」に当てはまるかといえば答えはYesでしょう。
しかし、これらが「一般的な日系企業で求められる能力か」というと、正しくありません。
日系企業では、下記の能力が求められます。
・協調性
・与えられた業務をミスなく進める丁寧さ
・行動する前に細かく確認する慎重さ
ここで実際に外資系企業と日系企業数社が掲載している「求める人材像」を比較してみましょう。
外資系企業が求める人材像の例
【UBS証券】
UBSが若い皆さんに求めるのは、主体性と責任感、問題解決能力です。
引用:USB日本「新卒採用」
【ネスレ日本】
『イノベーション』を起こせる人材を求めています。
引用:ネスレ日本「ネスレが求める人材像」
日系企業が求める人材像の例
【三菱商事】
最後に高い『倫理観』も重要だと考えています。法令順守は当然ですが、利他の精神を持ち、皆から尊敬されるような人が必要だと思います
引用:NIKKEI STYLE「三菱商事の新卒採用 「経営人材」に求める2つの資質」
【花王】
チームワークを大切にし協働で成果をあげる人財
引用:花王「求める人財について」
【日本航空(JAL)】
感謝の気持ちを常にもち、世の中すべてから謙虚に学び、自己成長できる人財
引用:日本航空「求める人財像」
どの企業も共通して「人から好かれること」を挙げていますが、外資系企業は「自律性、リーダーシップ、ロジカルシンキング」を求め、日系企業は「謙虚さ、誠実さ、協調性」を求めていることが表現の違いから読み取れます。
日系企業で求められる要素は、外資系企業が求める資質のほぼ逆を行くといっても過言ではありません。
採用像が異なるのであれば、実際に内定する社員の性質も当然違うため、外資系に内定する社員は、日系企業文化にはそぐわないということが見えてきます。ある分野で活躍できる人が、他の分野で苦労することは珍しくありません。外資系に内定することは、単に外資系企業内での優秀さを証明しているだけなのです。
おわりに
ここまで、外資系企業を受けるうえで知っておきたい3つの真実に触れてまいりました。
具体例を踏まえて理解することで「外資」=「優秀・実力主義・高給」と決め付けずに自分の適性からエントリーする企業を絞っていってください。
編集後記:ワンキャリ編集長KENからの一言
「外資系に内定することは、単に外資系企業内での優秀さを証明している」
これはまさにそのとおりでしょう。
私が就活をしていた時に、外資系企業を総なめにした、『内定王』がいました。彼のリーダーシップ、物怖じせず意見をいうスタイル、自分への自信は、外資系にとてもウケが良かったようです。
一方で、彼は日系大手企業の面接ではほぼ全滅。外資を受かった学生にありがちな、「ちょっとした傲慢(ごうまん)さ」が、日系企業にあわないと判断された要素かもしれません。恐らく、日系の人事は「彼は日系企業では活躍できない」ということを見抜いたのだと思います。言い換えれば、彼は『外資系の内定王』だったわけです。
日系と外資、「どちらが上で、どちらが下」ということはありません。就活生のみなさんは、自分に適した場所を探すための価値観を明確にすることにフォーカスをあてて、就活に挑むといいのかもしれません。
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※こちらの記事は2016年2月に掲載された記事の再掲です。