ワンキャリ編集部の辻です。
外資OB・OG訪問特集、外資メーカー編。
前編では「営業がポケモンなら、マーケティングはシムシティ」「20代のマーケターが50代のベテランを説得する社内調整」などのお話を伺いました。
後編の今回は、マーケターのセカンドキャリアや、外資メーカー各社の社風について語っていただきます。
<見どころ>
●絶えざるアジアリージョンとの交渉には英語力が必須
●マーケターのセカンドキャリア:50%はFMCGメーカー、25%はコンサル、25%はスタートアップ
●外資メーカーの社風の違いは「意思決定方法」に表れる
<プロフィール>
・辻:ワンキャリの新米編集者。大学時代は社交ダンスに熱中し、バイトではマダムのダンスパートナーを務めた。
・Aさん:外資メーカーのマーケティング担当。かつては営業も経験したのち、マーケターに転身した。
絶えざるアジアリージョンとの交渉には英語力が必須
辻:外資系メーカーを検討している学生にヒアリングしてみると、「仕事で英語力を生かせるから」といった志望理由をよく聞きます。Aさんは業務の中で英語を使うことはありますか?
Aさん:ありますね。日頃、アジアを統括する「リージョン」と密にコミュニケーションをとっていますから、英語は絶対に必要です。私自身、元々英語は得意ではなかったのですが、キャリアを高めていく上で必要だと思って入社後に勉強しました。
辻:リージョンとはどのようなコミュニケーションを取っているのでしょう?
Aさん:例えば、「工場の生産キャパシティを振り分けてもらう交渉」。ある製品を生産できる工場がアジアリージョンに1つしかないような場合、生産リソースを日本に振り分けてもらわなくてはいけません。しかし、「今は日本にリソースが割けない」と言われることもありますから、そのときは工場の混み具合を見ながらリージョンと交渉したり。マーケターの交渉力の見せ所です。
辻:海外に工場のある外資系メーカーならではの仕事です。英語力を生かしたいならマーケティング職を目指すべきでしょうか?
Aさん:英語を本格的に使いたいなら、物流部隊に所属すると良いかもしれません。「海外の工場から商品を取り寄せる」といったメインの業務を行うのは物流の部隊ですから、必然的に英語を使う機会は増えます。
マーケターのセカンドキャリア:50%はFMCGメーカー、25%はコンサル、25%はスタートアップ
辻:外資系メーカーのマーケターのセカンドキャリアについてお聞きしたいです。御社から転職される方は、どのような企業に行くのでしょうか?
Aさん:体感として、半分以上はFMCG(日用消費財)メーカーへの転職で、マーケティング職でキャリアアップを図る人が最も多いです。他社で興味がある事業内容を見つけ、ポジティブな理由で転職している印象です。最近も、外資系の飲料メーカーに転職したマーケターがいますね。
辻:今までのスキルを生かして、同業に転職するのは堅実な選択ですね。他にはどのような転職先があるのでしょう?
Aさん:約25%はコンサルへの転職。あとはベンチャー企業への転職ですね。ベンチャーに行く人は、小さなビジネスサイズを好み、手触り感ある仕事がしたいという人が多いイメージです。創業したばかりで名もないスタートアップのCOO(最高執行責任者)やCMO(最高マーケティング責任者)になっている方もいます。また、FMCGメーカーとベンチャーと中間のような選択肢ですが、日本に上陸したばかりの外資系企業の日本支社に転職する人もいたり。
辻:転職して経営層のポジションを目指せるのは魅力的です。
Aさん:ポジションだけを狙って転職した人は大抵失敗していますけどね(笑)。自分が活躍できるフィールドを求めて、キャリアを構築する方が重要だと思います。
あとは、転職ではなく買収先に出向することで新たなキャリアを構築する人もいますね。近年は、外資系メーカーが日系メーカーを買収するケースも少なくありません。出向先の子会社でマーケティング責任者や役員になるようなキャリアパスも考えられます。
辻:逆に、他社から御社に入ってくる方も多いと思います。外資系企業は中途社員が多く、多様なバックグラウンドの人材が集まっているイメージがありますが、外資メーカーはいかがでしょうか?
Aさん:「外資メーカー」というよりは、企業文化によって左右される印象があります。
たとえば、A社は生え抜きを大切にする文化が強く、入社してから勤め続けてきた社員の方が昇進しやすいといわれています。結果的に勤続年数は長くなり、新卒入社以来ずっとA社にいるような社員も多いようです。
一方、弊社は生え抜きが有利という文化ではないため、A社よりは転職する人が多いと思いますし、逆に中途入社してきて出世している人も結構います。ポテンシャル採用も珍しくなく、私の周りにも日系メーカーの営業職出身のマーケターがいたりしますね。
外資メーカーの社風の違いは「意思決定方法」に表れる
辻:学生にとっては、社風も気になるところだと思います。外資系メーカー各社の社風について教えていただけますか?
Aさん:A社は「論理的でアカデミックな人が多い」、B社は「ドライな人が多い一方で一体感がある」、C社は「まずは右脳で働いてロジックを後付けする」という印象です。こういった社風の違いは、意思決定の方法にも表れるんですよ。
辻:意思決定に社風が表れる……。どういうことでしょう?
Aさん:弊社は物腰のやわらかい人が多くアットホームな雰囲気のため、部署をまたいで仕事を進めるときは社内での根回しを重要視しますし、他部署との調和を乱さないように合意を形成していきます。
一方、A社では意思決定をするときも「俺たちの部署はこう思う」と部署間のロジックをぶつけ合うそうです。「異なる意見が衝突し合った先に、もっと良いものが生まれる」といったスタンスがあります。
辻:それは対照的な考え方ですね。社風に合うか合わないかは、働きやすさに大きく影響しそうです。
Aさん:そうですね。弊社のマーケティング職の方の転職理由には、「マーケターとしてのキャリアアップ」「マーケティング以外にやりたいことがある」もありますが、やはり「カルチャーが合わない」という人も少なくないんですよ。当たり前のことですが、就活をするときは「ありのままの自分を出せる会社」「自分が気持ちよく働く姿がイメージできる会社」を選ぶと良いでしょう。社風が合えば長く働き続けられますから。
辻:最後に、外資系メーカーへの就職を目指す学生に向けて、アドバイスはありますか?
Aさん:外資系メーカー志望者に限らない話ですが、志望企業を絞り込む前に「自分のキャリアのゴールがどこにあるのか」を意識してほしいです。そのゴールが決まったら、「そのゴールに向かう上で、最適なHow(入社する企業)は何か」を今一度考えてみてください。
「経営者になりたいから外資系メーカーを受ける」といった粒度では考えが浅いです。「○○な経営者になりたいから、○○社の○○部署で働きたい」というように細かく設定することをおすすめします。その結果、外資系メーカーや弊社で働きたいと思ったのなら、ぜひ挑戦してほしいです。
【代わりにOB訪問】
<外資総合コンサル>
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<外資金融>
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<外資メーカー>
・華やかなる外資マーケターの泥臭すぎる社内調整
・日本に初進出してきた外資系企業への転職も。マーケターのセカンドキャリア
【執筆協力:川島洋人、スギモトアイ】
(Photo:Viktoriia Photographer, G-Stock Studio/Shutterstock.com)