※こちらは2016年5月に掲載された記事の再掲です。
「就活がつらいです。自分の将来が見えません」
早稲田大学 4年 ♀ モトヤマさん
北野唯我(KEN)です。
この連載では、私のこれまでの経験を踏まえて、皆さんのキャリア相談にお答えしています。
就活が楽しいと感じる人と、つらいと感じる人の違い
「就活って楽しい」そう語る学生がいる一方で、「就活がつらい。不安で仕方ない」という学生さんもいます。この違いはなんでしょうか。
結論からいうと、両者の違いは「ゲームのルールが分かっているかどうか」が大きいと感じます。スポーツでもテレビゲームでも同じですが、ゲームのルールを知らなければ、それを楽しむことはできません。どういうことでしょうか。
就活のツラさは「答えの質を捉え間違っていること」に起因している
就職活動と受験勉強は「合否が出る」という点では同じです。しかし、両者には決定的に違う点があります。それは「答えの質」です。
そもそも「答え」には2つの側面があります。
それは「正しい答え」と「納得できる答え」です。
受験勉強では、「正しい答え」=「納得できる答え」でした。しかし、仕事では絶対的に正しい答えはありません。
就活においても「正しい答え」は存在せず、「納得できる答え」を探すしかありません。ところが、「就活がつらい」という学生さんのほとんどは、この「正しい答え」を求めている傾向があります。
あるはずのない答えを求めて進んでいるので苦しくなるのは当然です。特に高学歴の学生さんは「正しい答え」を探す癖があるので、この傾向が強くなりがちです。
学生の皆さんはぜひ、受験勉強とはルールが異なることを意識してください。就職活動のルールは「納得できる答え」を探すことです。
就活は、受験勉強ではなく「部活に近い」と考えた方がいい
ここまで聞いて、学生の皆さんはこう思うかもしれません。
「また、キレイごとを言っている」
そうですよね、確かに「納得できる答え」が見つかればこれ以上に簡単なことはありません。それが見つからなくて苦労しているわけです。ですが、実は多くの学生さんは、「納得できる答えを見つける方法」をすでに習得しています。それは「部活」です。
特に、何かしらの成果をだすことを目標に活動する部活は、以下の3つの視点から就職活動に似ています。
・偏差値のような分かりやすい指標で、上下を計れないこと
・一人ではなく、「チームでやること」を意識した方がうまくいくこと
あなたが部活で頑張っていたときに、体格や生まれ持っての運動神経・センスなどに影響を受けたように、就活には「どうしようもできない要因」が働くことがあります。例えば「親のコネ」や「見た目の良さ」などです。これらは残念ながら、就活の結果に影響を与えます。実に理不尽です。
ですが、皆さんは、同様の理不尽さに打ち勝ち自分なりに納得できるまで頑張ることを、部活でしてきたはずです。どんなに頑張っても越えられそうにない壁を感じるときもあったはずです。そこに正しい答えはなく、自分が納得できる答えしかない。就職活動も同じです。
「基礎練を愚直にやりきること」と「一緒に戦う仲間を手に入れること」がもっとも重要
では部活において、どうやって納得できる答えを目指したのでしょうか。結論からいうと、大事なのは以下の2つです。
2.「一緒に戦う仲間を手に入れること」
この2つが、「就活の納得度」を決定します。
1. 3つの基礎練習が大事
では、就活における「基礎練」とはいったいなんでしょうか。
就活においてどの企業でも必要となる能力は、
「思考能力」「コミュニケーション能力」「他者と協働する力」
の3つです。
方法は人それぞれですが、私は特に以下をオススメします。就活がつらいという学生さんは、この3つ、あるいはそれに近しいことを十分に繰り返してこられたでしょうか? まだ自信を持ってYesと言えない学生さんは、ぜひ今からでも実践してみてください。
<就活において基礎練となる基本動作(例)>
1)思考能力:知識を深めるために「本や良質な記事をたくさん読むこと」。種類はなんでもいい。
2)コミュニケーション能力:ビジネス現場で通じるコミュニケーションを学ぶために、「一流の大人(ビジネスマン)に仕事の話を聞きに行くこと」。OB訪問しかり。
3)チームで働く能力:「多少ストレスがかかる状況下」でチームで働く経験を今からでも持つこと。例えば、部活や、企業へのインターン、営業目標を持ったアルバイトなど。
2. 就活で出会った仲間は、一生の宝になりえる
もう1つ。
就活において、納得できる答えを出すために大事な方法は「一緒に戦う仲間を手に入れること」です。これにはモチベーションの維持といった効果もありますが、それ以外にもいくつかの面があります。
2つは「その後の一生の宝になる友人を手に入れられること」。
就活の時に出会った友達は、その後も一生の友達になりえます。仮に就活で自分が行きたい企業に行けなかったとしても、友は残ります。部活でも自分が頑張ってきた証が充実感を醸成します。同様の理屈です。
一緒に戦う仲間を手に入れることが必要なのは、ビジネスの世界では「誰かに求められることが善」だから
これまで「部活と就活は似ている」と話をしてきました。しかし、最後に、部活と就活では決定的に違うものがあります。それは「基本的な善を、なにとするか」という視点です。
あえてスタンスを取って語りますが、部活の世界、特に体育会系の部活では「勝つこと」が善です。しかし、ビジネスの世界では決定的に違います。ビジネスの世界における善とは、「誰かに求められること」です。
ビジネスが行き着くところ、つまりビジネスが成り立つことや商品が売れることというのはすなわち「誰かがその商品やサービスを欲すること」です。あるいは、企業から給料をもらうというのは、企業があなたを求めているということです。部活は勝利が善ですが、ビジネスは「誰かに求められること」が善です。両者は明確に違います。今回は問いかけで終わりたいと思います。
あなたは「勝つこと」にフォーカスしすぎていませんか? 誰かに求められ、あなたの魅力を伝えようと努力していますか?
本回答が皆さんの疑問を少しでも解消できたとしたらこれ以上幸せなことはありません。では、また次の機会に。
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