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就活サイトトップ就活記事「アメリカ人との喧嘩には、『猫だまし』だよ」。元Goo...

「アメリカ人との喧嘩には、『猫だまし』だよ」。元Google村上流グローバルでの出世術【村上憲郎】

インタビュー
2017年8月22日(火) | 49,303 views

「村上さん、放し飼いですね」:言い出しっぺ・やりだしっぺなチームに必要なこと

──前編「今56歳なら、どの会社のCEOならやりたいですか?村上さん。」はこちら


北野:前半では、イーロン・マスク率いる『テスラ』の魅力などについて語っていただきましたが、後半では、優秀な人材の定義や、グローバルでの戦い方について聞きます。村上さんがGoogle Japanを預かられていた時、当時のGoogleに入ってくる人はおそらく、先見の明があり、どこかユニークネスを持った魅力的な人が多かったはずです。そんな優秀な方々に共通する要素をあげるとするとなんだったと思いますか。


村上:結局ね、ある種のリーダーシップがあるやつらが多かったよね。別の言い方をすると言いだしっぺで、やりだしっぺなやつが多かったかな。


北野:まさに村上さんご自身も、学生運動で逮捕されたり、「言いだしっぺ」のタイプだったと思うんですけど、そういう人材に対して、長く共に働いてもらうという観点から、どういう環境や働き方があればいいとお考えですか。


村上:放し飼い、これしかないね。私なんて会社の人とかパートナーの人とか提携先の人とかから、「村上さんは、社員の皆さんを、放し飼いですね」ってよく言われる。逆にいうと、放し飼いしたら「何したらいいんでしょうか?」みたいな社員が居たら、雇った自分が悪い、ということ。

いつも人を足らないような状態にしておく:これが「出たがり上司」を出さないコツ

北野:では、本当にすごい若者が入ってきました。放し飼い、自由にさせる。それ以外にできることって本当にないですか?


村上:いつもたとえ話で言うのはね「そこはあなたがやっているんだ」っていう形を作ることだね。どうしても、何かしら組織図みたいなものが出てくるわけじゃない。例えば、Aという会社があったとして、あなたは組織図の『そこ』をやっているでしょ。Aの『そこ』というところに関しては、あなたこそがAそのものなんだ。まあつまり、あなたの実力がAの実力なんだ。で、もしあなたが、上役に「どうすればいいんでしょうか」なんて聞いてきても、上役としては「あなたが『そこ』をやっていてA社内では一番知っているんだから。僕はどうすればいいの?」という話じゃない。


北野:なるほど。


村上:でね、せめて、案の2つくらいは持ってきてくださいよ、と返すわけよ。で、彼が、2つの案を持ってきてくれたらね、「であなたはどう思うの?」って聞くわけよ。で、「案1がいい」というなら、「あなたが一番知ってるんだから、案1でしょ、でも、責任は一緒に取らないよ」という。そうすると、でかい会社でも、『ここ』は俺がやっている、ここは俺しかやってない、うわー、大変だってなるけど、伸びるやつは、グングン伸びますよね。


北野:それ、ベンチャー界隈では、「クソジーコ問題」と呼ばれています。サッカー界の天才・ジーコが、自分が監督しているときに、自分の方がうまいからといって、いつも自分がボールを蹴ってしまったとしたら、メンバーが全然育たないという。つまり「出たがり上司」の問題なんですけど、そのマインドを外すのって難しいと思うんですよね。 


村上:いつも人が足らないような状態にしておくこと、だね。忙しいようにしておくんですよ。いつも人が足らないから、自分が蹴れるような余裕がもてない。

それで残業代払わない。残業代払うと、みんな、残業するでしょ。残業代払わないとさっさと帰る。何故、残業代払わないかというと、時間で払っているわけじゃないからね。例えば、北野さんが殺し屋だとして、そこでね、機関銃どかーっと打ってね、敵を30人殺すって言っているんだから、殺した数だけ払うよって。あなたが徹夜して30人殺しても、隣のやつが2時間しかいなかったけど100人殺したら、どっちにたくさん払うべき? って。時間で払っているわけじゃないからね。


北野:確かに(笑)。分かりやすいアナロジーですね。

学卒新入社員でも、5年ぐらいすれば、課長をバカにするでしょ?

北野:結果的に、今の日本って、日系で育ったのに、どっかのタイミングで外資に行っちゃうっていう構造ができていると思うんですね。僕は「大リーグ問題」といっているんですけど、せっかく日本で育ったのに彼らが活躍できるフィールドを用意できていないっていう。村上さんもそうですし、僕ももともと日系企業出身なので。


村上:やっぱり給料が高いんでしょ? だから要するに日本の企業も分かりやすくいうと20代で部長とか課長とかドンドンでます、とかそういう風にすればいい。大体皆さんも、そうだと思うけど、学卒新入社員でも、5年ぐらいすれば、課長をバカにするでしょ。


北野:そうですね、2年くらいで馬鹿にする気がします(笑)。


村上:優秀な子たちは、社長まで馬鹿にするわけだよ、任せられたらやれるわけよ。やらせればいいんだと思いますよ。

「アメリカ人全員がアホじゃない。日本人と同じ比率でアホがいるだけ」

北野:私も「大リーグ問題」に関しては、スタンスはフラットなんですが、日本人が日系から外資に行ったときに、そこで出世するために意識すべきことってありますか? マイナーチェンジしなきゃいけない部分です。


村上:何でもいいから喋る。これだね。会議でね。何でそれが評価されるかというと、そいつがしゃべったことがとんでもなく駄目でも、他の人を刺激してね、何かが起きるということがあるんで。まあ典型的にはアメリカ人なんだけど、とんでもないこと言うわけですよ、会議で。彼らは小学校のときから「Show and Tell」っていう、自分の大事にしているものをクラスのみんなの前で話すという訓練を受けているわけだから。くだらないことを話すというのを全然恥ずかしいと思ってないからね、日本人は言う前に頭の中で反芻しているわけじゃない、あーだ、……こうだって、まして英語で言えっていわれているから、「うーん」ってなるわけよ。だから何でもいいから臆せずね、しゃべりすぎるぞ、くらいに思ってしゃべらないとダメだと思う。


北野:そうおっしゃるということは、日本人は喋らなさすぎ。そして、それが評価に響いている、ということですよね?


村上:日本人は、日本語の会議でも話さないわけじゃない。むこうから促されて、「そこのところは君が話しなさい」「詳しいところをあんたが話しなさい」っていわれて初めて一言言うだけでしょ。さっき言ったように「そこを知っているのは俺だけだ、俺以外のお前ら発言する資格はねーだろ」くらいで普通じゃない。


北野:面白いです(笑)。村上さん自身は、このことをどのタイミングで気付かれたんですか? 喋んないと意味ないわって。


村上:DEC(デック)という外資系企業に入ったときだよね。英語が全くできないからさ、もうすぐにさ、「アホや」って思われているんだよね。アホなアメリカ人に。アメリカ人全員アホといっているわけじゃないよ。日本人と同じ比率でアホがいるんですよ。でも、そいつらが「ノリオは英語が喋れない=頭が悪い」と思っているわけ。こりゃもう喋らないとな、って。

アメリカ人との喧嘩のやり方は、「猫だまし」をすること

北野:確かに、日本人ってアメリカ人に対してびびりすぎだと思うんですね。僕は、「空気を読まないこと」が唯一の強みの人間なので、アメリカ人に対して「お前ら、Wasteful(無駄遣い)文化だろ。俺は嫌いだ」とかいうと、逆に面白がってくれるわけです。お前、日本人なのに意見言うね、って。村上さん流のアメリカ人との戦い方ってあるんですか?


村上:アメリカの手先として、日本法人のトップをやる時に心得ていなきゃいけないのは、アメリカ人との喧嘩のやり方だね。例えば、彼らから3つくらい質問が来たとするよね。それに、一つ一つに返しちゃダメ。彼らからすると、言い訳にしか聞こえないわけ。で、どうすればいいかというと、パン! と猫だましをやるんだよね。


北野:「猫だまし」とは?


村上:例えば、昔、Yahoo! JAPANにGoogle国内のサービスが負けていたときに、日本に出張してきたアメリカ人がいたのよ。Googleといえどもすべて賢いわけじゃないし、彼も何かリポートを送らないといけない。何故か米国本社でも評判良いノリオの悪口位を言わないと、彼としては目立たないわけだよね。で、彼に「どうして、ヤフーに負けているんだ?」て聞かれるわけよ。大事なのは、そのときに真面目に答えないことだよね。

俺がいったのは「じゃあ、ヤフーみたいになってほしいの? 日本のヤフーって米国のヤフーと違うよ。eBayが早々と撤退したので、ヤフーとeBayが合体したような会社だよ。なれるよ? DeNAっていうところがあるから買って?」「何? 大企業からの広告を伸ばしたいの? じゃあ、博報堂買ってちょうだい」みたいな話をするわけだよ。そしたら一切反論できないわけよ。


北野:つまり「『Googleがどうあるべきか』という大きなビジョンを無視すれば、ヤフーに勝つ方法はいくらでもありますよ」と、反論したということですね。


村上:そういうことです。

Googleと電博が協業するフェーズを作りだした、伝説の『アドマン』とは?

北野:少し話を戻して、採用に関する話を、聞かせてください。日本法人を立ち上げられた2000年代って、Googleのブランドは日本国内では今ほど強烈ではなかったと思うんですけど、人を採用するという観点で一番大変だったことってありますか? 特にキーパーソンがいればぜひ。


村上:タカヒロ(高広伯彦)を採れたことだね。もともと、佐藤康夫さんっていう私の片腕でセールスを仕切ってくれていた人が声掛けてくれたんだよね。Googleの日本法人は、R&Dを作るまでは、結局セールスマーケティングの会社だった。そうすると日本の広告業界に切り込んでいくわけじゃない。


北野:タカヒロ(高広伯彦)氏は、博報堂・電通を経た、日本の伝説的なアドマンですよね。彼をどうやって、引っ張ってきたんですか?


村上:その頃にはね、検索連動型広告のグーグルアドワーズが出てきてて、タカヒロは勘がいいからね「新聞広告のような、1面で3,000万というモデルは、アドワーズには太刀打ちできない」って、すぐ分かっていた。そんな折に、声掛けたら入ってくれたんだよね。これは幸運だったけど、広告業界から他にも彼のようなキーパーソンを採ってくるというところが大変でしたね。


北野:広告という観点でいうと、Googleはルールを変えた存在だと思うんですが、既存の広告業界からの、それこそ電博からの反発ってあったんですか?


村上:もうそれはめちゃくちゃよ。それこそ言えないけども、いろんなところがね。みんな少しずつ分かり始めてくれたわけなんだけどね。そのときも、佐藤さんと、タカヒロから広告業界の原理的なルールを学んだことが大きかったな。

ユーチューブ時代の幕開け。BBCと英王室がチャネルを作ったら、NHKが急変?

北野:今でこそ、グーグルと電博って協業するフェーズだと思いますけど、電博を味方につける上で、決定的となった事業上の出来事ってあるんですか?


村上:やっぱりユーチューブだね。当時、Googleは、グーグルテレビというのをだしていて、強敵はどこだったかというと、ユーチューブだった。だから、ユーチューブを倒す作戦を広告代理店と着々と準備を進めていたわけよ。そんな話をしていたら、いきなり、Google本社がユーチューブを買ったわけよ。米国時間で金曜日に発表があるまで、私も全然知らなくて、その週末の土日は電話なりっぱなしでしたよ。

その中で潮目が変わったのを1つだけあげるとしたら、ユーチューブ上にBBCと英国王室がチャンネルというアカウントを作ったことでしたね。それまでテレビ局はネット放送に懐疑的だった。でも、BBCと英国王室がチャンネルをネットでやりはじめたら、NHKが急に「Googleさん、来てー!」ってなった。BBCがやったらNHKがやる。そうするとね、今度は民放がさ、国営放送局に先越されてなるものかってなるんですよね。これが潮目だったね。


北野:そうなると、テレビ局と密接な関係を持つ電博はいずれグーグルと協業することになる、ということですね。一つ一つは偶然の出来事も重なっていると思いますが、まさに「外堀を埋める」戦略が功を奏したということですね。

20代の若者に向けたメッセージ

北野:最後になんですけど、村上さんが、一緒に働きたいと思う20代の若手ってどんな人かというのを教えてください。


村上:食うためだって分かった上で、今はささやかに生きてるけど、大きな夢を持っているという。それに繋げられるかなと思って今この会社でこういうことをしているんですよ、みたいな若者だね。


北野:いきなり優しくなりましたね(笑)。では最後に、これから就職活動を迎えられる学生へのメッセージもいただけますか?


村上:今までの人たちとは「違う世界を生き抜いていかなきゃダメなんだ」っていう気持ちを持つこと。やっぱり、ここにきて第四次産業革命、アメリカはインダストリーインターネットという言い方をしているけど、これから20~30年といったスパンの革命が続く、その真っただ中を自分は生き抜くんだっていう覚悟を持っていた方がいいと思います。

第四次産業革命というのは、IoTとAIを駆使した新しいモノづくりと、モノづくりだけじゃなんだけど、サプライチェーン全体を巻き込む革命になるんですね。皆さんは、この真っただ中を生き抜いて行くことになる。ある会社に就職するというよりも、「第四次産業革命に就職する。」という風に思っておいた方がいいですね。


北野:今年もめちゃくちゃ楽しかったです。ありがとうございました。


一流たちが激論を交わす 〜北野唯我 インタビュー「シリーズ:激論」〜

・フリークアウト・ホールディングス取締役 佐藤裕介氏
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北野唯我(KEN)
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北野唯我(KEN)

北野 唯我(きたの ゆいが):株式会社ワンキャリア 取締役CSO/作家
新卒で博報堂の経営企画局・経理財務局勤務。米国・台湾留学後、ボストンコンサルティンググループを経て、2016年ワンキャリアに参画、現在取締役として戦略・採用・広報部門を統括。2021年10月、同社は東京証券取引所マザーズ市場に上場。作家としても活動し、30歳のデビュー作『転職の思考法』(ダイヤモンド社)が20万部、他に『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社)などで、著者累計40万部。

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