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「学生よ、ジョブローテがある会社には行くな」KENが考える現代の就活が抱える3つの課題【外資BIG5:対談後記】第二弾

コラム キャリアコンサルタント
2016年4月12日(火) | 67,072 views

全11回にわたりお伝えした「外資BIG5」とKENの対談特集。5人との対談を受けて就活生に伝えたいことを、KENが3回に分けてお伝えします。第二弾は現代の就活が抱える3つの課題についてお伝えします。

KEN:
ワンキャリアの若手編集長。28歳。博報堂、ボストンコンサルティンググループ出身。ビジネス経験とは別に、学生時代にボランティア団体を設立・プロボノ支援等のソーシャルセクターでの活動経験を持つ。


「日本では、一度レールから外れた人が、再就職するのはとても難しい」

これは私が再就職活動をしていた時に痛感したことです。4年弱勤めた博報堂を辞め、海外を旅していた私は、帰国後に仕事を探す必要がありました。

私は多くは求めていませんでした。「自分で選んだ決断。どの企業でも、与えられた仕事を頑張ろう」と思っていました。受けられる企業は片っ端から受けていました。

ですが、現実は厳しく、日系企業はエントリー段階で大体落とされました。エージェントから聞くに、落とされた理由は「キャリアは良いが、1年以上、空白期間(働いていなかった期間)があるから」。

この過程で、私は日本における「一度レールから外れた人が再就職するハードル」を痛感していました。と同時に「日本の人材領域における課題」が少しだけわかってきた感覚を得ました。グローバルと比較したとき、「日本の人材領域における課題」は、3つあると考えます。


課題1:総合職採用とジョブローテーション制度により、「キャリアの選択肢」が広がっているように見えて、実は狭くなっている

1つ目は、「キャリアの選択肢」についてです。多くの日系企業では、「総合職採用」と「ジョブローテーション制度」を採用しています。(※1)

(※1)総合職採用(一括採用):入社時は一括で採用を行い、入社後に配属先を決める仕組み。この総合職採用と合わせて使われることが多いのが「ジョブローテーション」。定期的に職種や部門を異動させる仕組みを指す。例えば、3年に一度、営業からマーケティングの部署に異動する、3年に一度、金属部門のA部署からB部署に異動するといったもの。

あえてスタンスを取ってお伝えすると、この2つの組み合わせは、「キャリアの選択肢を狭める仕組み」だと私は考えます。

まず、メリットについて触れます。確かに、総合職+ジョブローテーションの組み合わせは、「会社のなかで仕事をうまく進める力」はとてもつきやすいのも事実です。短期間で、さまざまな部署を見られるので社内のネットワークは強くなり、自社の業務理解も進みます。この技術や知識は、例えば全社で一丸になって行う、大型プロジェクトを運営する際には役に立ちます。「どの部署に誰がいて、何をしているのか?」が手に取るようにわかるからです。私が実際に働いていた博報堂もこの「総合職+ジョブローテーション」の組み合わせを採用していました。

一方で、デメリットもあります。それは「専門性が高い人材が育ちづらく、社外でのキャリアの幅を狭めること」だと考えます。理由は2つあります。まず1つ目は「大学で学んだことが生かされないことが多いこと」。一括採用では、入社後に配属が決まります。そして、それは自分の希望が通らないことの方が多い。多くの学生は「大学で学んだ知識を生かす機会」を失います。

一方、海外の大学では、自分が専攻してきた領域や、長期インターンにて培った経験を元に仕事を選び、仕事に生かすことが当然。ここでまず、差が生まれます。

(ちなみに「大学で学んできたことは意味がない」という意見はよく耳にしますが、私はそれは部分的事実でしかないと感じます。少なくとも私は学部時代に学んだ知識が、直接的であれ、間接的であれ、実務で生きた経験はたくさんあります)

2つ目の理由は「ジョブローテーションの仕組みが、専門技術を獲得する期間を長期化させる」こと。ジョブローテーション制度は一般的に3年に一度程度、部署を異動させます。結果、専門性を身につけることができるのは、ジョブローテーションが全て終了し、部署が実質的に決まる10年目以降になります。外資系企業で10年目というと、「専門性をひととおり身に付け終わり、マネージャーとしてチーム全体を率い、新卒採用にまで携わっているレベル」です。技術の差が付くのは当然です。

この日系と外資系での到達スピードの差が何を生み出すか? それは社外におけるキャリアの選択肢の幅です。

30歳前後といえば、転職市場で売り時の年齢。「32歳で、専門性を身につけ、マネージャー経験もある人材」と、「32歳でいろいろな業務経験をしてきて、ようやく自分が伸ばしたい領域を見つけた人材」。どちらが市場価値が高いかは明白です。

総合職採用とジョブローテーション制度は、一見すると「キャリアの選択肢」が広がっているように見えて、社外も含めると実は狭くなっている、と私は考えます。自分が将来、「やりたいこと」を見つけた時に、背中を押し出す勇気をもたらしてくれる要素の1つは「自分は、明確にこれができる」という自信です。


課題2:外国人含め、尖った才能を受け入れられる「日系企業」が極めて少なく、才能のある若手が、外資系・ベンチャー企業に流れざるを得ない構造がある

日本の人材領域における課題のうち、2つ目は、「尖った才能を受け入れられる会社が少ないこと」です。

あえてスタンスを取って語りますが、日本には、尖った才能を受け切れる日系企業は、リクルートグループなど、ほんの一部だと感じます。

大企業はしばしば、「天才は要らない」と言われます。確かに、真の天才は大企業に入るべきでないでしょう。というよりは、彼らは大企業に興味すら持たないことが多いでしょう。しかし、日系の大企業がいう天才とは、「何か偉業を成し遂げる可能性のある人材」だけではなく「自分の意見をしっかり持ち、表現する人」も含まれると私は感じます。

その理由はシンプルに、「尖った才能をマネジメントする機能が弱いから」だと感じます。日本人の調和を重んずる特徴と、過去の歴史を考えると当然です。現在のマネジメント層、または彼らを支える周りのスタッフメンバーは、高度経済成長期のなかで、終身雇用と年功序列のなかで育ってきました。破壊的なイノベーションを起こし得る「尖った才能」はむしろ邪魔だったことの方が多い。正しい方向に向かえば業績が伸びることが保証されていた時代に、「自分の意見を発信し、時として右に習えない人材」は不要だった企業がほとんどです。

または、仮に採用時に「光る才能」を採用したとして、入社後、他の社員へ与える影響が良くも悪くも強すぎて退社せざるを得ないことも多い。この状況で、採用しないことは当たり前の話です。

では、彼らはどこに行くのか?

まさに今回特集した外資系企業は1つの選択肢です。「多様性を楽しむ文化」をそもそも持つ米国中心の文化が、尖った才能を受け入れてきた。そして、実態以上に、外資系企業への注目度が高まり、日系大手企業に尖った才能を持つ人材が流れ切れない。入ってこないと、いつまでたっても慣れない。この負のスパイラルが繰り返されます。

すなわち、外国人含め、尖った才能を受け入れられる「日系企業」が極めて少なく、才能のある若手が、外資系・ベンチャー企業に流れざるを得ない構造にあると考えます。


課題3:日本の就活におけるインターン制度は本来の役割を果たしておらず、限られた期間内で「情報戦を制し、早めに動いた学生が勝つ」構造にならざるを得ない

日本の人材領域における課題のうち、3つ目の課題は「インターンの仕組み」にあると考えます。

これも、あえてスタンスを取ってお伝えすると、今の日本における就職活動のインターン制度は、「採用のためのインターン」であって、「仕事の経験を積むためのインターン」ではありません。海外では、「インターン=特定領域で業務経験を積むための就業機会」であるが、日本では「インターン=内定を取るための選考の一部」となっています。

学生は内定が欲しいので、とりあえずインターンにたくさん参加しようというインセンティブが働きます。これは当然でしょう。企業も短い期間のなかで、採用母集団を作る必要があるので、大量の学生をとりあえず受け入れます。結果、学生が得られるものは、情報のネットワークのみ。「その仕事が実際どんな仕事をするのか?」がわからないのは当然で、知識や技術も身につかない。選考の場以上でも以下でもありません。

結果、一部の「若い頃からやりたいことが明確な学生」以外は、イメージや給料で選ぶしか選択肢がありません。多くの学生が、総合商社や広告・マスコミといった人気業界を志望するのは当然です。企業から見ても、一括採用では「短い期間で大量の学生をみる必要」があり、ポテンシャルを見極めるための時間が足りないため、選考のために、いわゆる「学歴フィルター」を使わざるを得ないこともあるでしょう。

つまり、学生からすると、情報戦を制し、早期に動き出し、面接慣れした学生が強い。彼らが内定を多く取り、そうでない学生に内定が出にくい二極化の構造になる。これはもちろん、どちらが悪いとかではないと感じます。


おわりに:では、どうすればいいのか? 

では、どうすればいいか。私はいつも以下の3つのアドバイスをしています。

1. 単にバイトするぐらいなら、2〜3カ月以上続く、長期インターンシップで実際に働いてみた方がいい。そうすれば「自分に合う働き方」が少しはわかる。

2.「将来、何かしたいが、まだやりたいことが明確でない」学生こそ、部署の先決め採用の会社か、職種別採用の企業を選んだ方がいい。食べていける技術が1つあると、夢が見つかった時に圧倒的に挑戦しやすくなる。

3. 尖った才能のある学生は、外資系か、特別枠採用(ex経営企画職での採用など)がある日系企業を選んだ方がいい。ではないと結局、2〜3年も待たずに辞めることになる。

上記3つが、私がこれまで、日系大手企業・外資系コンサルティングファームを経て、現在ベンチャーの役員をして感じる「現代の就活の問題点と対策」です。これらは全て現時点における「仮説」であり、建設的な反論は大歓迎です。ぜひ、皆さんの意見を教えてください。@yuigaK

明日は、私自身の過去を振り返りながら「天職の見つけ方」について考察を深めていきます。「KENの回想記ーソーシャルセクターとの出会いと、天職の見つけ方ー」もぜひご覧ください。

──外資系企業の中でも圧倒的な人気を誇る5つの企業に迫る「外資BIG5特集」。記事一覧はコチラ。


<外資BIG5特集:記事一覧> 

【1】前Google日本法人名誉会長 村上憲郎氏
・「もう一度、就活をするとしたらどこに入るのか?」誰もが予想しなかった意外な会社とは(前編)
・日本人がグローバル企業でCEOを務めるために必要なたった2つのこととは?(中編)
・今の人工知能は、ターミネーターの一歩手前なのか?人工知能の最先端に迫る!(後編)
【2】マッキンゼー出身、一般社団法人RCF 藤沢烈氏
・「この会社の中で一番難しい仕事がやりたい」新卒でそう言った彼が今でも目の前の仕事に全力でコミットする理由(前編)
・「NPO経営はベンチャーが上場するのと同じくらい難しいと感じる」外資・起業・NPO全てを経験した彼が語る経営の本質(後編)
【3】BCG出身、特定非営利活動法人クロスフィールズ 松島由佳氏
・「BCGは今でも大好きです」そう述べた彼女がそれでもなお、新興国向けNPOを立ち上げた理由に迫る(前編)
・途上国と日本のそれぞれの良さを活かしあって描ける未来もある。「留職」が目指す未来とは?(後編)
【4】ゴールドマン・サックス出身、ヒューマン・ライツ・ウォッチ 吉岡利代氏
・「金融業界での経験がなければ、今の自分はない」彼女が今、ソーシャルで働く意義に迫る(前編)
・「息を吸うように仕事をしている」彼女が世界の問題を身近に感じる理由(後編)
【5】P&G出身、株式会社キャンサースキャン 福吉潤氏
・P&GマーケからハーバードMBAへ。キャンサースキャン福吉氏が今、日本の社会で証明したい「社会への貢献」と「リターン」の両立とは?(前編)
・「世界最強と言われるP&Gマーケティングの限界は存在するのか」という問いへの彼の回答とは?(後編)
【6】5人の対談を終えてKENの対談後記
・賢者が持つ「価値観の源泉」に迫る ー5人の共通点と相違点ー
・現代の就活が抱える3つの課題 ー「学生よ、ジョブローテがある会社には行くな」ー
・KENの回想記 ーソーシャル領域との出会いと、天職の見つけ方ー

※ 外資BIG5特集:特設ページはこちら

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北野唯我(KEN)
取締役
北野唯我(KEN)

北野 唯我(きたの ゆいが):株式会社ワンキャリア 取締役CSO/作家
新卒で博報堂の経営企画局・経理財務局勤務。米国・台湾留学後、ボストンコンサルティンググループを経て、2016年ワンキャリアに参画、現在取締役として戦略・採用・広報部門を統括。2021年10月、同社は東京証券取引所マザーズ市場に上場。作家としても活動し、30歳のデビュー作『転職の思考法』(ダイヤモンド社)が20万部、他に『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社)などで、著者累計40万部。

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