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就活サイトトップ就活記事前Google日本法人名誉会長村上氏が即答!「もう一度...

前Google日本法人名誉会長村上氏が即答!「もう一度、就活をするとしたらどこに入るのか?」誰もが予想しなかった意外な会社とは(前編)

外資系 IT
2017年4月14日(金) | 144,510 views

※去年話題になった外資BIG5特集、特に人気だった村上さんの記事を本日、3記事まとめて再掲します。


「狭き門」といわれる、外資系企業。その中でも圧倒的な人気を誇る5つの企業に迫る「外資BIG5特集」。

第1弾は特別対談と称して、前Google日本法人名誉会長 村上憲郎氏に対して、ボストン コンサルティング グループ出身の編集長KENが独占インタビューを試みた。前編では、世界水準のキャリアを歩む村上氏が考える「キャリア論」に迫っていく。

もし新卒なら、迷わずここに入りたい

村上憲郎氏:
複数の外資系企業の社長を経験した後、Google米国本社副社長兼Google日本法人社長を務めた。現在も国際的に多分野に渡り活躍。前Google日本法人名誉会長。

KEN(聞き手):
ワンキャリアの若手編集長。1987年生まれ。博報堂、ボストンコンサルティンググループ出身。ビジネス経験とは別に、学生時代にボランティア団体を設立・プロボノ支援等のソーシャルセクターでの活動経験を持つ。


KEN:今日はお忙しいところありがとうございます。さて、早速ですが、技術者として、そして経営者として全世界的を股にかけ活躍してきた村上さんに、お伺いします。ズバリ、もし今もう一度新卒として就職活動をするとしたら、どの会社を選びますか?


村上:西川(徹)さんがやっているプリファードインフラストラクチャー(※1)だな。
(※1)プリファードインフラストラクチャー(株式会社Preferred Infrastructure / 略称 PFI):西川徹氏が東京大学大学院に在学中、ACM国際大学対抗プログラムコンテスト(ACM/ICPC)の世界大会に出場したメンバーと共に2006年に創業した人工知能テクノロジーベンチャー。


KEN:即答で来ましたね。その理由とは?


村上:今、人工知能は第3次ブームを迎えているんだよね。私も人工知能をDEC(Digital Equipment Corporation)(※2)という会社にいた時代に勉強させてもらったわけだけれど、その頃がちょうど第2次ブームだった。
(※2)DEC:Digital Equipment Corporation。米大手コンピュータ会社。1998年にコンパック(後に、更にヒューレッド・パッカード)により買収された。


KEN:DECは、まだメインフレーム(大型汎用機)が主流だった時代に、ミニコンピュータで市場を開拓した伝説の企業でしたね。


村上:そして今は、IoT(※3)、ビックデータ、ディープラーニング(※4)というのがITの3大話で、これが人工知能の第3次ブームといわれているわけです。

この3つは相互に関連しているんだよね。つまり、IoTでものすごい量のいわゆるビックデータが得られるようになり、そのビックデータがディープラーニングによって学習される。そしてディープラーニングがあるからこそ、逆にビックデータが解析でき、ビックデータとディープラーニングは、謂わば「卵と鶏」の関係にある。

そのように、この3大話には一貫性があるし、それらがたどり着くところが、人工知能なんですよ。
(※3)IoT:Internet of Things 、モノのインターネットのこと。従来は主にPCやサーバー等のIT関連機器のみがインターネットに接続されていたがそれ以外のさまざまなモノへインターネットを接続する技術の総称を指す。
(※4)ディープラーニング:Deep Learning、深層学習のこと。ニューラルネットワークに対する機械学習の手法の一種。データから反復的に学習し、そこに潜むパターンを見つけ出す機械学習の技術のなかでも、高い精度の技術と期待されている。

人工知能の未来を担う日本のトップベンチャーは、プリファードインフラストラクチャー、メタップス、UBIC

KEN:だから、今後益々、人工知能の世界が面白くなると。


村上:人工知能の分野では、日本でいうと3つの会社があげられる。プリファードインフラストラクチャーでしょ。それから、佐藤(航陽)さんのやっているメタップス(※5)、そして、武田(秀樹)さんがCTOをやっているUBIC(※6)。その中でも、西川さんのプリファードインフラストラクチャーと思うけれど、入りたくても入れないだろうね。だって、東大の秀才、それも、ディープラーニングをやっているような秀才しか採らないからね。
(※5)株式会社メタップス:佐藤航陽氏が代表を務める人工知能テクノロジーベンチャー。人工知能を活用し、世界8拠点でアプリ市場を分析のうえ、アプリの集客・分析・収益化をワンストップで支援するサービスなどを展開。トップディベロッパーを中心に多くのアプリ開発者が利用している。
(※6)株式会社 UBIC:武田秀樹氏がCTOを務める、行動情報科学に基づく高度な解析技術によるデータ解析事業を通じて、国際訴訟や不正調査の支援を行うデータ解析企業。

親が知っている会社には、行くな!

KEN:事前にお送りしたアンケートで、学生へのメッセージに「ママが知っている会社には行くな!」とありました。強烈だなと思ったのですが、ここにはどういう意図があるのでしょう?


村上:「かあちゃん」でも「お母さん」でもなく、「ママ」っていうのがポイントでね。まず、いつまでも「ママ」って思ってしまうような精神構造を疑えと。これは、メタファー的な話としてですね。


KEN:「実際に母親や父親がどんな会社を知っているか」という話ではなく、まずは精神的に自立しろと。


村上:真面目な話をするとね、内定もらうじゃない。するとあなたの母親は「◯◯ちゃん、いい会社に入ってよかったね」と言うかもしれない。けれども、そんな、ママが知っているような会社に入ったからといって何になるの? 大手に就職したってだけじゃ、これからの時代どうしょうもないでしょう、という意味です。


KEN:なるほど。「あなたのご両親も素晴らしい企業を知っているかもしれないが、すでに知名度が高い大手企業には行くな」ということですね。


「Googleがなんなの? あそこだって究極のブラック企業だよ」

KEN:先ほどの話のように、未来を予見して企業を選べということですね。でも、村上さんがいらしたGoogleだって「ママが知っているような会社」じゃないですか?


村上:Googleがなんなの? あそこだって究極のブラック企業だよ(笑)。


KEN:そうなんですか?! それは、つまり、かなりのハードワークを強いられるという意味でしょうか?


村上:俺が言うんだから間違いない(笑)。つまりお伝えしたいのは、そんなところに入れたからこれで安心だなんて、思ってちゃダメっていうことだよ。

大手企業への就職は、戦略としては「アリ」

KEN: 一方、傾向だけみると、学生の間では、大手企業、例えば最近多く聞くのが「総合商社に入りたい」などといった、「ママの知っている企業」への入社願望を持つ人が多いのも事実です。


村上:それはね、戦略としては「アリ」だと思う。ただ、なんのために商社にいくかっていうと、基本動作を身につけさせてもらうっていうことだよね。「3年経ったら辞めますよ」と心の中で思いながら、面接の時には絶対そんなことは言わずに、終身雇用を信じているようなふりをして内定をもらう。

日本では、例えば米国では当たり前の「イントロダクション・トゥ・ビジネス(ビジネス入門)」という課目は、教育課程のなかに入っていないわけですから、それを実践として学ぶっていうことはアリです。


KEN:必要なものは、すべてそこで叩き込んでもらうつもりで行けと。


村上:それこそ、元伊藤忠商事会長で中国大使にもなった丹波(宇一郎)さんが、「雑巾掛けを10年くらいやった方がいいよ」と発言していたのと同じでね。ただ、それは、その「会社の中で出世するため」というのではなく、「自分のキャリアを磨くため」なんですよね。雑巾掛けしながら、盗めるものは全部盗むぞと。ノウハウを身につけるというつもりで臨みなさいということです。

裏口入社で入った日系企業が、「両刀使いのソフトウェアエンジニア」として世界水準のキャリアを進むことになったキッカケ

KEN:村上さんご自身は、新卒で日立電子に入社されましたよね。


村上:裏口入社してね(笑)。なんたって、逮捕歴ありの極左暴力学生だったからね。無理やり卒業させられたけど、就職なんてできると思ってなかった。でも遠縁の人がなんとか探してくれて。名刺の裏に「よろしく頼む」って書いてもらってね、裏口入社したわけです。それで、結局8年間勤務しました。


KEN:そこで、盗める技術はすべて盗んだと。


村上:今思うと、日立電子(現:日立国際電気)というこじんまりした会社に入ったのが、「ツキの村上」の始まりだったんだよね。


KEN:それは、どういう意味ですか?


村上:当時は、1970年代でしょ。学生時代にコンピュータをちょっと触っていたって言ったら、それなりにニーズがあって、日立製作所は無理だけど、日立電子ならってことで、入れてもらえたんですね。

日立電子は、ミニコンピュータが専門だったので、コンピュータの隅から隅まで学ばせてもらったけど、もしもあの時、メインフレームと当時呼ばれていた大型のコンピュータが専門の日立製作所に入っていたら、コンピュータの細かいことなんて、わからないままで終わっちゃったと思うんだよね。


KEN:いわゆる大手ではなかったからこそ、技術の細かいところにまで直接関わることができたということですね。


村上:ミニコンピュータって、いってみたら、今のラズベリー・パイ(※7)みたいなものだよ。そこから、A/D変換とかD/A変換(※8)といった仕組みを含む入出力装置の電子回路のことも学べたし、おかげで今IoTでも引く手あまたな、「ハードウェアも少しは分かる両刀使いのソフトウェアエンジニア」に育ててもらったんだからね。
(※7)ラズベリー・パイ(Raspberry Pi):ARMプロセッサを掲載した超小型ボード型コンピュータ。英ラズベリー・パイ財団により開発されている。
(※8)A/D変換・D/A変換:アナログ入出力の変換方式


KEN:当時手にした技術が、見事に今につながっているわけですね。


村上:それと同時に、「会社とは何か」とか「企業は儲けを出すことが必要だ」とか「カスタマー・サティスファクションは命だ」とか「カスタマー・サティスファクションに100%は求めるな、ある程度以上先は手を抜け」とか、さまざまなことを教わり、身につけることができましたね。

人生は「あみだくじ」。自分の決断を後から後悔しない

KEN:村上さんは、これまでのキャリアを通じて、数々の意思決定をしてきたと思います。学生にとって、就職活動は、人生初めての大きな意思決定の機会です。正解が見えないなか、意思決定をするうえでの秘訣はなんですか。


村上:私は、人生は「あみだくじ」だと思っています。つまり、選んだことがないのに、そっちを選ばなかったことを後悔するなということです。もしかしたら、そっちの道の方がもっと酷かったかもしれないわけだし、自分の決断を後悔することはやめなさいと。あとは、どんな選択をしても、その選択の結果として手に入れられることは、すべて手に入れ、身につけろというふうに思っていますね。

村上氏が「仕事をするうえで忘れない、たった1つのこと」とは

KEN:そんな村上さんに、シンプルに「なんのために働くのか」についてお伺いしたいです。


村上:そりゃ、カネだよ。


KEN:か、カネですか?


村上:そういうと、日本の人は、何か汚いことをいっているように捉えるでしょう? でも、戦後、日本人はみんな貧乏でひもじい生活のなかから立ち上がってきた。そして、少なくとも自分が味わった悲惨な貧乏生活を、妻や子供たちに味合わせたくないと、必死に働いてきたわけだから。

今そんなこと言ってもリアリティがないと言われてしまうかもしれないけれど、仮にでも「明日の食料が得られないかもしれない」という状況を想定して、そういった恐怖に打ちひしがれるという感覚を疑似体験してみることから、「働くということは、明日の食料を手に入れるためだ」ということを、仕事をするうえで、絶対に押さえておくべきだと思っています。


KEN:なるほどと思う一方で、私がもし学生だったら気になるのが、村上さんレベルの人が、個人として明日の食料に困るということは想像しにくいかなと思うんです。おっしゃるのは、日本全体として、ということですか?


村上:そんな大きな物語を語らないってことを、学生運動から足を洗って堅気になるときに、私は決めたんです。そうじゃなくて、自分のこととしての発言ですね。

齢69歳にして、毎日、ワクワクするような人工知能第3次ブームの真っただ中

KEN:その中で、なぜITの領域を中心に選ばれてきたのでしょうか? 実績だけ拝見すると、「明日の食料を手にいれるため」という金銭的な理由に加えて「好きなものをやってきた」とも感じるのですが。


村上:コンピュータの仕事ができたら良いなと思うきっかけになったのは、1968年に封切られた「2001年宇宙の旅」というSF映画を観たことですね。この映画に、HAL9000という人工知能型のコンピュータが登場するんだけど、できれば、人工知能に関係する仕事がしてみたいなと思っていました。

1978年に日立がミニコンピュータから撤退するということになって、ミニコンピュータが好きだったので、そのご本家のようなDECに新聞広告に応募するかたちで転社しました。入ってみたら、DECは、米国で国防総省の人工知能開発で大きな役割を果たしていたんだよね。これが「ツキの村上」の2番目の証拠(笑)。


KEN:日立のミニコンピュータ撤退をキッカケに、ホットな外資に行かれたと。


村上:もちろん、英語が全く喋れないのに、米国のコンピュータ会社に入ってしまうというとんでもないことを選択してしまったので、それから、3年間、毎日3時間、睡眠時間を削って、1日も休まず英語を勉強せざるを得ないはめに陥って、そのお陰で、何とか英語が身についた。これが「ツキの村上」の3番目の証拠(笑)。

DECで担当させられたのが、通産省(現 経済産業省)の「第5世代コンピュータプロジェクト」という人工知能型コンピュータを作るというプロジェクトだったというのが、「ツキの村上」の4番目の証拠(笑)。

その結果、1986年には、DEC米国本社人工知能技術センターへの転勤を命じられるというのが、「ツキの村上」の5番目の証拠(笑)。


KEN:すごいですね(笑)。そしてGoogle時代に入るわけですね。


村上:そうですね、2003年にGoogleに採用される大きな理由も人工知能をやったことがあるということだったわけで、結局、人工知能との腐れ縁が、私の仕事人生といってもいいほどですので、齢69歳になろうとして、毎日、ワクワクするような人工知能第3次ブームの真っただ中。

いずれの日にか、人間の知能に比べても遜色のない人工知能の出現に立ち会えることを目指したいと思っております。もしそれが、生きている間に実現したら、それこそ「ツキの村上」も完成するというわけですね。


── 中編「日本人がグローバル企業でCEOを務める為に必要なたった2つのこととは?」に続く


WRITING:今井麻希子/PHOTO:河森駿

村上憲郎:
1947年大分県佐伯市生まれ。1970年京都大学工学部卒業、日立電子に入社し、1978年に日本DECに転職。1986年から5年間米国本社勤務、帰国後1992年に同社取締役に就任。1994年米インフォミックス副社長兼日本法人社長。1998年ノーザンテレコム(ノーテルネットワーク)ジャパン社長。2001年にドーセントジャパンを設立し社長に就任。2003年より米Google副社長兼Google日本法人社長に就任、2009年より2011年までGoogle名誉会長を務め、2011年に株式会社村上憲郎事務所を設立。現在は株式会社エナリス代表取締役社長の他、学術機関での教鞭をとる。


北野唯我(KEN)のTwitterはこちらから


<外資BIG5特集:記事一覧> 

【1】前Google日本法人名誉会長 村上憲郎氏
・「もう一度、就活をするとしたらどこに入るのか?」誰もが予想しなかった意外な会社とは(前編)
・日本人がグローバル企業でCEOを務めるために必要なたった2つのこととは?(中編)
・今の人工知能は、ターミネーターの一歩手前なのか?人工知能の最先端に迫る!(後編)
【2】マッキンゼー出身、一般社団法人RCF 藤沢烈氏
・「この会社の中で一番難しい仕事がやりたい」新卒でそう言った彼が今でも目の前の仕事に全力でコミットする理由(前編)
・「NPO経営はベンチャーが上場するのと同じくらい難しいと感じる」外資・起業・NPO全てを経験した彼が語る経営の本質(後編)
【3】BCG出身、特定非営利活動法人クロスフィールズ 松島由佳氏
・「BCGは今でも大好きです」そう述べた彼女がそれでもなお、新興国向けNPOを立ち上げた理由に迫る(前編)
・途上国と日本のそれぞれの良さを活かしあって描ける未来もある。「留職」が目指す未来とは?(後編)
【4】ゴールドマン・サックス出身、ヒューマン・ライツ・ウォッチ 吉岡利代氏
・「金融業界での経験がなければ、今の自分はない」彼女が今、ソーシャルで働く意義に迫る(前編)
・「息を吸うように仕事をしている」彼女が世界の問題を身近に感じる理由(後編)
【5】P&G出身、株式会社キャンサースキャン 福吉潤氏
・P&GマーケからハーバードMBAへ。キャンサースキャン福吉氏が今、日本の社会で証明したい「社会への貢献」と「リターン」の両立とは?(前編)
・「世界最強と言われるP&Gマーケティングの限界は存在するのか」という問いへの彼の回答とは?(後編)
【6】5人の対談を終えてKENの対談後記
・賢者が持つ「価値観の源泉」に迫る ー5人の共通点と相違点ー
・現代の就活が抱える3つの課題 ー「学生よ、ジョブローテがある会社には行くな」ー
・KENの回想記 ーソーシャル領域との出会いと、天職の見つけ方ー

※ 外資BIG5特集:特設ページはこちら

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