こんにちは、ワンキャリ編集部です。
ワンキャリ編集部が、総力をあげてお届けする【業界研究:第1弾】。第9回は、原料メーカーについてです。
就活を始めてから知る「実はこんなにすごい、安定日系企業」の代表格として「原料メーカー」が挙げられるのではないでしょうか。会社名は知ってる企業でも、「実はこんなビジネスもやってたんだ」と驚く企業もあることでしょう。
今回は日本の原料メーカーの大将と呼ぶにふさわしいトップ6社である、
(※1)旭硝子(AGC)は、平成30年7月1日にAGCに、新日鐵住金は、平成31年4月1日に日本製鉄に社名を変更しました。公開日の関係で、変更前の社名を使用している箇所があるので、予めご了承ください
をピックアップし、隠れた魅力と選考対策法をお伝えします!
1. 旭化成:必ず勝てる仕組みがある、総合原料メーカーの王
「多種多様」こそ、旭化成を語る上で欠かせない要素です。
「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」の3領域に分かれる8つの事業を展開しており、2018年度の決算では、各事業の売上構成比は順に53%、31%、14%です(参考:「決算のポイント 2018年3月期 本決算」)。繊維やケミカルだけでなく住宅や建材、医療領域など8つの事業を分社化した形で所有し、特に「住宅事業」は競合である東レや帝人にはない事業で特徴の1つです。
扱っている製品ベースでは、合成ゴム、ポリウレタンや人口革などの繊維、建築材、半導体、バッテリー、衣料品、さらにB to C(Business to Consumer=消費者向け)製品としてサランラップやへーベルハウスまで手がけていて、まさに「多種多様」。財務データを見てもバランスよく事業ポートフォリオが組まれており、「どこかが売れなくても、他で支える」仕組みが完成しています。これぞ、旭化成が必ず勝てる仕組みです。
選考対策
現在までの就活傾向を見ると「分野別インターンシップ」など、入社前にどの業界へ進みたいかを考えさせたいという意図がみえます。内定者に話を聞くと、事業ごとに分社化しているため、入社後自分の担当領域が変わる機会が多くはないからこそ、
前述の意図を持っているようです。そのため、「旭化成に入りたい」という動機よりも「繊維・住宅・ケミカルetc.に携わりたい」という志望動機を考え、その上でなぜ旭化成が自分の志望に適しているかという語り方ができると良いでしょう。
旭化成内定者の特徴は「善人的リーダーシップ」の持ち主。サークルやゼミなどのメンバーが「もっと仲良くなるためにどうしたらいいか」を考え、積極的に行動できる人が多い傾向にあるという声もありました。
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2. 花王:原料の利益を消費者へ還元する2市場の覇者
タイトルを見て「原料メーカーで花王?」と思われた方もいるかと思います。花王は一般的にSOFINAを始めとした化粧品や、ビオレ、メリットなど消費者向け製品で知られています。
しかし、実は「世界の洗剤原料工場」といえるほどの大企業です。法人向けの「BtoB」の洗剤原料事業は花王の重要な事業分野です。
花王の事業は「コンシューマープロダクツ事業」と「ケミカル事業」に大別されています。
・「コンシューマープロダクツ事業」:一般消費者向けの製品を展開。以下の4つの事業分野で構成。「化粧品」「スキンケア・ヘアケア」「ヒューマンヘルスケア」「ファブリック&ホームケア」
・「ケミカル事業」:「BtoB」向けの製品を展開。産業界の需要に応じた原材料を提供。
(参考:花王HP「事業分野」)
財務データを見ると、「ケミカル事業」は、毎年、全体の営業利益の約15%を占めています(※1)。原料は、界面活性剤から高級アルコールまで、洗剤・化粧品になくてはならないもの。(※2)花王の独自の技術も多く、特許資産規模では2017年のデータで科学業界3位(※3)。長期的に利益をたたきだせる技術が集約していると言えます。
※1 参考:花王 決算短信 バックナンバー「2017年(平成29年)12月期〔IFRS〕(2017/01/01-2017/12/31) 」
※2 参考:花王HP「製品情報」
※3 参考:Patent Result「【化学業界】他社牽制力ランキング2017トップ3は富士フイルム、三菱ケミカル、花王」
選考対策
花王の強みは「ケミカル事業で稼いだ利益を、消費者向け製品へ投資できる」こと。原料を世界へ届けることで高品質な洗剤製品の生産を可能にしつつ、優れた技術を活用し、店頭まで届けられる企業は他にありません。したがって、志望動機で「なぜ花王なのか」は他の原料メーカーと比較しても容易に語れるはずです。
花王内定者の特徴は「温厚、堅実、協調性重視」の三拍子がそろっていること。小さなことでも感謝を忘れない人や、トラブルがあってもみんなの幸せのために影響力の大小を考えず動ける「小さな努力と小さな感謝」を積み重ねるタイプ多いそうです。
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3. AGC:三菱グループの傘下で世界のガラスを担う最大手
旧社名は「旭硝子」(※)で、ガラス製品では世界最大手のシェアを誇ります。旭化成と名前が似ていましたが、全くの別組織です。しかし、エントリーされる方にぜひ知っていただきたいのは、電子事業、化学品事業の売上げの利益率についてです。
(※)……旭硝子(AGC)は、平成30年7月1日にAGCに社名を変更しました。
売上の構成比は以下のようになっています。
【売上構成比】
ガラス事業:49%
電子事業:17%
化学品事業:29%
その他:5%
(出典:AGC「財務情報 セグメント別売上高 」)
メインであるガラス事業の売上を除外した、残り50%はほぼ電子と化学品分野で担っています。この2つの分野はガラス事業と比較すると利益率が圧倒的に高くなっています。ガラス事業が約3.7%に対して、電子事業が約10.4%、化学品事業が約14.5%となっており、この2つの事業もAGCの経営の特徴の1つです。
また、ガラス事業がトップであるためには熾烈な価格競争も背景にあることを忘れてはいけません。
選考対策
社員が語るAGCの魅力は「設計から現場導入まで、一括して携われる」こと。メーカーの多くは業務が細分化されており、大きなプロジェクトのうちごく一部に参加する形が多いなかで、AGCでは製品開発を一括関与できるのが魅力です。また、海外展開されたガラス製品も多いため、グローバル志向の学生も積極的に採用されています。
他のメーカーと異なり、愛社精神に加えて若手から裁量権がある仕事がしたいことやグローバル志向を積極的にアピールしていきましょう。実際に内定者から話を伺うと「最初は商社志望だったが、配属リスクがないAGCへより魅力を感じた」といった事例が多いようです。
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4. 東レ:繊維で勝つことで、世界へ挑む
東レは売上の約40%(参考:Toray Group 公式HP「セグメント情報」)を「繊維」で担う、大繊維メーカーです。
何よりも特徴的なのがナイロン、ポリエステル、アクリルの3大合成繊維を「全て」生産できる点。繊維市場は世界的に見ても競争が激しく、帝人や旭化成が次々撤退・縮小した分野でもあります。東レは「ふんばることで、利益を確保した」企業。もちろんそれだけでは海外企業に負けるため、ユニクロのヒートテックを始めとする高価格の繊維を技術力でカバーすることで勝ち続けています。旭化成のポートフォリオ型経営とは真逆の「選択と集中」で、1分野の王になったといえるでしょう。
選考対策
東レの選考では、「東レの事業戦略」と「東レ社員の人間性」を軸に志望動機を組み立てて、アピールすることが大きなカギとなります。
東レでは事業拡大のための「グローバル志向」や「志望領域以外への対応力」が求められています。
2011年から経営改革を実施していて、現在は中期経営課題「プロジェクトAP-G 2019」(参考:Toray Group 公式HP「長期経営ビジョン・中期経営課題」)を推進しています。その内容は「各事業が世界No.1になるための戦略と課題」についてです。「東レグループが強みを発揮できる領域への事業拡大を一層推進」していくために、「海外で働きたいという熱い思い」や「志望領域以外でも頑張れる人材である」ことを示すことが重要となってきます。事業展開国・地域数は26カ国、海外の関係会社数は157社となっており、海外で働かない社員はほとんどいないと人事の方が言っていたそうです。採用傾向にも反映されていて、内定者の1/3は留学経験者のようです。
また、「東レはOB・OG訪問が好き」と、多くの学生から聞いています。適当に大手だからと受けて欲しくないという思いが強いのでしょう。数回に渡るリクルーター面談は質問というよりもフランクな雑談形式で進み、学生の素をみたいという意図が伺えます。したがって、東レの社員とのやり取りの特徴は「飾らずにありのままをみせる」ことが挙げられます。
OB訪問で効果的に話を引き出すために、こちらの記事も合わせてご覧ください。
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5. 帝人:ヘルスケアに注力しつつ、グローバル進出の機会をうかがう挑戦者
ダーウィンの名言「生き残るのは、変化できる者である」を体現した存在こそ、帝人といえます。
日本初のレーヨンメーカーとしてベンチャー精神たくましく業界へ切り込んだ帝人は、世界20カ国以上約170社にも及ぶグループ会社へ事業をグローバルに展開。業態にとらわれず成長してきました。しかし、樹脂事業を展開していたシンガポール工場の閉鎖や米国在宅医療事業からの撤退など、グローバル企業を目指しながら苦悩する帝人にとって、この現状は決してポジティブとはいえません。また、売上げの比率では、原料メーカーが世界へ切り込む中、約6割を国内需要でまかないます。(参考:帝人「帝人グループの概要と中期経営計画」)。
選考対策
内定者からの情報によると、帝人は東レ、旭化成などと並ぶ「素材メーカー」としての印象が強い人が多いですが、新入社員は素材系の業務を行う可能性はわずか20%ほどです。残りは全員がヘルスケア事業、特にMRなどの製薬関係に就く人が多いとのこと。
創業時は「東レ」や「カネカ」などと同じ「繊維系素材メーカー」であったものの、企業理念「Quality of Lifeの向上」においてヘルスケア領域にもチャンスがあると英断し、素材メーカーで培った技術力という強みを生かしてヘルスケア領域にも展開を果たしました。
2017年3月期では、帝人の営業利益は素材系事業より「ヘルスケア事業」が上回っています。また売上に対する利益率は、繊維事業を含んだマテリアル部門が5%程度なのに対し、「ヘルスケア部門」は15%を超えています。さらに、16年度から17年度の営業利益率の伸び率は驚異の45%増となっており、今後の成長が見込める事業なのは確かと言えるでしょう(参考:帝人「2017年度 決算 及び 2018年度 業績見通し 説明資料」)。
したがって、志望動機でヘルスケア領域への興味関心を示すことは、選考での高評価につながるでしょう。
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6. 日本製鉄(旧:新日鐵住金):世界を担う鉄産業の要
2012年に新日本製鐵が住友金属工業と合併し「新日鐵住金」、さらに2019年4月に「日本製鉄」と社名を変更しました。粗鉄生産量世界No.2の地位に甘んじるつもりはなく、世界1位を目指しています。2011年当時、業界1位の特許数を誇り、その数は11,655件。競合他社のJFEスチールが329件、ポスコが234件と比較すると脅威的な数字で、日本製鉄の確かな技術力につながっています。(参考:新日本製鐵・住友金属「総合力世界No.1の鉄鋼メーカーへ」)。
実際に活躍する社員から聞いた採用される人材のキーワードは「滅私奉公」。上司に仕え、ガツガツと仕事へまい進する縦社会が得意な人には居心地がよいという声もあります。
選考対策
いい意味で古典的な社風を維持しているので「ご恩と奉公」を意識した志望動機や面接態度で挑めば内定へ近づくでしょう。また女性の採用人数が増加傾向にあるため、伝統企業だからどうせ……と性別を理由に諦める必要はありません。
また、リクルーターの「推しメン」に選ばれるかどうかが、内定を大きく左右します。実際にある社員は「新日鐵の選考はリクルーター面談がすべて」と語っていました。5〜8回という複数回のリクルーター面談では、「なぜ鉄鋼業界?」「なぜ新日鐵住金?」ということを、かなり詰められるそう。そのためか、内定者の特徴は「鉄づくりに対する個人的な思い出」がある人も多いようです。親が製鉄工場を運営していた、鉄の開発を研究していたなど、熱い思いを訴えられる背景が重要視されるようで、良くも悪くも「受けるべき人が受ける」企業といえそうです。
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おわりに
ここまで、日本を代表する原料メーカーを特集してまいりました。つい同業でまとめて考えがちなこの分野ですが異業種で比較すると、まさに「6社6様」で、かつ求める人材も特徴も見えてくるかと思います。安定企業だから、この分野の研究をしていたから……と安易に受けるのではなく、人生観や社風に合った就活プランを立てて挑んでください。
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