※こちらは2016年3月に公開された記事の再掲です。情報は掲載当時のものです。
こんにちは、ワンキャリ編集部トイアンナです。
ワンキャリ編集部が総力を挙げてお届けする【業界研究:第1弾】。今回はインフラ業界についてお届けします。
インフラ業界を「安定企業だから」と受ける人は後を絶ちませんが、一方で内定する学生には大きな違いがあります。
「電力・ガス・鉄道・発電所」の4大インフラ業界を受ける方必読! 業界研究と就活対策をご案内いたします。
インフラ業界全体の特徴・魅力
インフラ業界の仕事とは?
インフラ業界とは、冒頭ご紹介した「電力・ガス・鉄道・発電所」以外にも航空、高速道路、物流、通信などを含む、私たちの生活基盤を支えるサービス・仕組みを提供する事業を行う業界のことを指します。
例に挙げたように、同じインフラ業界でもその業態はさまざまで、大きく分けて「生活インフラ」「交通インフラ」と説明されることもあります。
「生活インフラ」は電力やガス、ネットなど、生活に欠かせないエネルギーや通信環境を支えるインフラのこと、「交通インフラ」は鉄道や航空会社をはじめとした交通にまつわる環境を支えるインフラのことを指します。
生活インフラに含まれる企業例:東京電力ホールディングス / 東京ガス / 電源開発(JPOWER) / NTTデータ など
交通インフラに含まれる企業例:JR東日本(東日本旅客鉄道) / 全日本空輸(ANA) / 日本航空(JAL) / 東日本高速道路(NEXCO東日本) など
官僚気質が残る、古き良き日本企業
インフラ業界は全体的に、古き良き日本企業を思い出させるような以下の傾向があります。
(1)年功序列で、腰を据えて仕事に取り組める環境
(2)上下関係をきっちりと重んずる風土・組織
(3)ルーティンワークへの正確性とスピードが求められる
(4)上司など「人間関係」で大きく変わる仕事の満足度
しかし、傾向といっても官業が民営化した鉄道事業と、国際的競争を強いられる発電所事業では大きな特徴の差があります。また同じ「おっとり・のんびり」した社風が特徴でも、柔和な態度だがロジカルに事業を進める日立製作所と、ミス無き業務が出世に繋がるJR東日本(東日本旅客鉄道)では全く異なります。
また、これから民間が参入する電力・ガス事業では社内風土の改革が始まっており、現在は官僚気質であっても、20年後はKDDI、NTTのように市場での成長を視野に入れた経営方針へ変化していくと予想される企業もあります。離職率の少ない職場だからこそ、「現在の状況」だけでなく「将来の展望」を見据えた就活をしてください。
電力:自由化で市況が一変し、民間企業との生き残り競争へ
業種別分析
かつて電力といえば、半官半民企業として真っ先に挙げられる業界でした。しかし、2016年4月からは電力自由化がスタート(※1)。昭和シェル石油や伊藤忠商事、ソフトバンク(SBパワー)、エイチ・アイ・エス(HTBエナジー)など、資本力の大きい企業が次々と参入しました。こうした参入企業は新電力と呼ばれ、大手電力会社よりも安い価格で電力を提供し、大手からの切り替え顧客を増やしています。東京電力を筆頭に、伝統的な電力各社は新電力の動きに対応するため、変革を余儀なくされています。2017年に始まった都市ガス自由化を受け、電気料金プランとセットで加入できるガスプランの提供や、新電力への出資・コラボを行う企業も出てきています。
しかしOB・OGにヒアリングしてみると改革の波には苦労が見られ、企業体制はそのままだと聞きます。
柔軟なサービス展開ができ、膨大な顧客情報を持つ民間企業と対等に戦えるか、伝統的電力企業の底力が問われます。官庁と同様に部署ごとで激務や高ノルマなブラックからホワイト、体育会系からおっとりまで環境や社風はさまざまです。希望通りの配属にはならないリスクがあることは、覚悟したほうがよいでしょう。
志望動機づくりのポイント
キーワードは「協調性」と「市場の未来と志望理由のリンク」。民間企業ではなるべく具体的な自己アピールが求められますが、電力では逆に、「太陽光発電」「電力自由化」などのビッグワードで未来を語ることが必要とされます。太陽光発電の開発や電力自由化の中でどう国民への電力供給を確実なものとするか、関心あるワードを織り交ぜてあなたの意見を見せてください。内定者に多いのは「そつがない」人。ミスを減らしてロスカットできるような人材が成功しやすいようです。
集団面接で隣の人へアドバイスを求められるなど、全方位への協調性も求められます。専門性が高い質問が多いため、課題のレポートを1本書くつもりで業界研究をしてください。
『電力会社のおしごと』は良書ですので、背景知識のインプットに活用してください。
なお、東京電力は福島への賠償に対するコメントを求められることがあり、原発関連の知識に関しては賛成・反対、両方の意見について勉強しておくとベターです。
(※1)参照:エネチャレンジ「トップページ」
(※2)2019年2月現在、各社登録が完了してます。参考:資源エネルギー庁「登録小売電気事業者一覧」
ガス:田園開発から輸入まで一手にこなす、右肩上がりの業界
業種別分析
都市ガス販売量は2013年までの4年連続上がり調子で順風満帆でした。今後は小売自由化の波で、伝統的ガス会社(東京ガス、大阪ガスetc.)は苦戦を強いられることが予想されます。先んじて自由化したイギリスではガス・電気のセット割引なども行われており、日本でもガス・石油会社の電力市場自由化に伴って、柔軟なサービスを提供できる企業の参入が目立ちます。ぜひ就活対策として他国の事例研究をしておいてください。
社風はOB・OG訪問によると、他のインフラと比べて、
(1)社内政治ができると出世がかなり有利
(2)昇格には個人差があり、男性が比較的早く昇格する
(3)脱・年功序列の試み
が特徴的です。下積み期間は6年~10年と長く、それまでは並列して昇格しますがその後は差が出る傾向にあります。また、東京ガスは特に飲みニケーションが多いという話を耳にします。
志望動機づくりのポイント
通過する志望動機には「社員への親近感」と「草の根から社会を豊かにする思想」が共通項として挙げられます。ぜひOB・OG訪問を通じて社員と接触してください。また、ガスを供給することは電力と何が違うのか(例:お湯を温める速度、貯蓄可能なエネルギー)を説明し「なぜ電力でなくガスなのか」という意見も明確にしておく必要があります。
過去の傾向では面接最初の質問で逆質問(何か質問ありますか?)をいきなり投げかけられたこともあります。志望度が低い学生を絞り込む目的と思われますので、しっかり準備してください。
ガス業界の理解のためには、以下の良書が参考になります。
交通・鉄道:ライバルなき安定感を持つJR(旧国鉄)と、都市開発のやりがいを得る私鉄
業種別分析
・JR(旧国鉄)各社
JR(Japan Railways)の略称で知られる旧国鉄グループは、売上トップのJR東日本と新幹線利益で潤うJR東海を筆頭に、高速道路値下げなどの影響はあっても寡占市場のおかげで「インフラ=安定」の地位を保持しています。年功序列よりも地域で給与差が出るのも特徴です。社風は「のんびり」タイプで、社員のヒアリングによると、他のインフラと比べて最もルーティーンワークを好み、トップダウン傾向が強く残っているようです。
・私鉄各社
対して私鉄は「線路の上」だけでなく、街全体の開発も大きな魅力です。
たとえば売上高日本1位の東急電鉄(東京急行電鉄)は「鉄道・都市開発・サービス」の3本柱を掲げており、海外へ積極的に展開しています(※3)。各社共通なのは「現業」と呼ばれる現場職員は純体育会系、オフィス勤務は官僚的なタイプで、毛色がかなり違うといわれています。
志望動機づくりのポイント
志望動機が(1)ローカル、もしくは(2)哲学的なものが好まれる、これが鉄道業界の特徴。
それぞれの例を挙げておきます。
(1)志望動機がローカルな例:
「◯◯駅で幼少期から育ち、街づくりに関心を持った」という動機
(2)志望動機が哲学的な例:
「人の体を運ぶことは人の気持ちも運んでいる。そんな心を動かす業務につきたい」という動機
他のインフラでもビッグワード(例:人を支える、社会の基盤になる)は使うものの、交通業界に特徴は、「心を運ぶ」といった比喩表現が効果的であること。メンタル的なレベルで企業とのつながりを志望動機に求められる傾向があります。
エントリーシートから面接までオーソドックスな内容が多いので、ひねった回答を用意する必要はありません。素直で真面目な人がほしい、と説明会で伺ったことがありますが採用プロセスも求める人材像を反映するかのようなストレートな質問が多くあります。交通の社員に実際のES添削をお願いするなどの対策を取るといいでしょう。
(※3)参考:東急電鉄「国際事業(海外でのまちづくり)」
発電所:海外企業との連携でグローバル競争へ。新興国での発電所設立が成長の鍵
業種別分析【発電所】
他のインフラより民間企業の多さとグローバルな市場争いで一線を画すのが発電所ビジネスです。業界1位は総売上の約30%をインフラでまかなう東芝(※4)。中国、インド、東南アジアといった新興国での発電所設立が成長の鍵となっており、世界大手であるGEやアレバと連携しながら、グローバルマーケットへ挑みます。発電所は20年程度で寿命を迎えるため安定市場が見込める一方で、熾烈(しれつ)な価格競争に巻き込まれています。
社員にヒアリングをすると、たいてい「社内の風通しが悪いね(笑)」という意見をよく耳にします。提案企画の承認には時間がかかるものの、業界全体として「おっとり、いい人」が多いようです。
志望動機づくりのポイント
業界トップ3社は愛社精神をいずれも求めますので、思い入れや感情的な動機(例:親が勤めていた、憧れの製品だったなど)を語れるようにしてください。また、理系就職が多く、その多くが発電を専門としていた経歴を持っています。文系内定者は「電力という縁の下の力持ちを、さらに縁の下で支える発電所事業に魅力を感じた」など、他のインフラとの差別化ができる志望動機を持っています。現在、東芝は不適切会計問題で就活人気も下落していますが、短期的なトレンドに惑わされず各社の魅力を発見してください。
(※4)参考:東芝「部門別売上高」
インフラ = 「安定」以外にも押さえておくべき特徴はたくさんある
ここまで、インフラ業界ごとの傾向と対策についてお伝えしてまいりました。
「安定」なイメージがあっても競争社会を前に身構える電力・ガスから、レッドオーシャンに飛び込む発電所、そして安定企業の鉄道までさまざまな特徴があることがみえてきたかと思います。インフラだから電力もガスも……四国出身だから四国電力でといった考え方で挑む前に、OB・OG訪問で必ず社員の姿を学んで、しっかりと対策をしておいてください。
東京電力
東京ガス
JR東日本(東日本旅客鉄道)
東芝
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