こんにちは、ワンキャリ編集部です。
ワンキャリ編集部が総力を挙げて紹介する【最新版:業界研究】。今回は製薬業界がテーマです。
製薬業界主要4社である武田薬品工業(以下、武田薬品)、大塚製薬、アステラス製薬、第一三共について、各社の強みや社風を比較しながらお伝えするとともに、特許失効問題や医療制度に大きく影響を受け、変化する製薬業界の魅力に迫ります。
<目次>
●業界全体の傾向
●業績比較
●各社の特徴
・武田薬品
・大塚製薬
・アステラス製薬
・第一三共
●平均給与比較
●職種別の選考対策
業界全体の傾向
製薬業界では、各社の収益の柱となる大型医薬品が2010年前後に特許が切れる「2010年問題」が発生しました。
特許切れに伴い、新薬は安価な後発医薬品(ジェネリック医薬品)にシェアを奪われはじめ、2021年度には後発医薬品のシェアは約80.1%にまで上っています(※1)。
また新型コロナウイルス感染拡大により受診抑制に伴い、医薬品需要減少や、新薬浸透の遅れなどの影響を受けています(※2)。
各製薬会社では今後、競争力を高めるために新薬開発を行うと同時に、看板商品を有する他社を買収する動きが活発になることが予想されます。
例えば、各社は以下のような企業を買収しています。
・武田薬品:シャイアー社(希少疾患・血漿(けっしょう)分画製剤)買収……約6.2兆円(※3)
・大塚製薬:アバニア社(神経疾患)買収……約4,200億円(※4)
・アステラス製薬:オーデンテス社(遺伝子治療)買収……約3,200億円(※5)
・第一三共:ランバクシー社(後発医薬品)買収と売却……約5,000億円(※6)
これらは全て近年に扱われた案件で、製薬業界が大きく動いていることの表れでもあります。まさに、製薬業界は今後も目が離せない業界であるといえるでしょう。
(※1)参考:日本ジェネリック製薬協会「ジェネリック医薬品数量シェア分析結果(速報値;令和3(2021)年度第1四半期)について」
(※2)参考:AnswersNews「新型コロナウイルスは国内製薬企業の業績にどんな影響を与えているのか」
(※3)参考:SankeiBiz「武田薬品6.2兆円の買収劇 コードネームは『Yamazaki』『Hibiki』」
(※4)参考:薬事日報「【大塚製薬】米ベンチャーを4200億円で買収‐神経疾患領域に本格参入」
(※5)参考:日本経済新聞「アステラス、米バイオを3200億円で買収」
(※6)参考:東洋経済ONLINE「第一三共が問題のインド子会社を実質売却」
業績比較
製薬業界主要4社である武田薬品・大塚製薬・アステラス製薬・第一三共の売上収益と営業利益を見てみましょう。以下のグラフは各社の業績です。
※出典:2020年度 有価証券報告書「武田薬品 P.135/大塚HD P.89/アステラス P.88/第一三共 P.81」
※大塚製薬は持株会社の大塚HDの数値です。
2020年度は売上収益、営業利益ともに武田薬品が2位以下と大きく差をつけています。
2018年6月には、アステラス製薬が約1年10カ月ぶりに時価総額で武田薬品を逆転するなど、攻防が続いていました(※7)。しかし、2019年1月に武田薬品がアイルランド製薬大手である「シャイアー」を子会社化。2020年の世界売上高ランキングでは第10位となっています(※8)(※9)。
(※7)参考:日本経済新聞「時価総額、アステラスが武田を逆転 1年10カ月ぶり」
(※8)参考:日本経済新聞「武田、時価総額トップ10入り シャイアー買収で 新株取引始まる」
(※9)参考: AnswersNews「【2021年版】製薬会社世界ランキング トップ3はロシュ、ノバルティス、メルク…買収でアッヴィやブリストルも売り上げ拡大」
各社の特徴
武田薬品:国内シェア1位のガリバー、業界一の誠実な社員
武田薬品は国内シェア25.9%(2021年度)を誇る製薬業界の巨人です(※10)。特徴はその潤沢な資金による(1)開発への積極性と(2)豊富な商品ラインアップの2点です。
(※10)参考:業界動向サーチ「製薬業界」
(1)開発への積極性
武田は約4,558億円もの資金を研究開発費に投資しており、アステラス製薬(約2,245億円)の約2倍もの費用を投じています(※11)。
(※11)出典:2020年度有価証券報告書「武田薬品工業 P.25/アステラス製薬 P.16」
(2)豊富な商品ラインアップ
主要商品は、2型糖尿病治療薬「アログリプチン安息香酸塩」、高血圧症治療薬「アジルサルタン」、多発性骨髄腫(形質細胞がん)およびマントル細胞リンパ腫(リンパ節がん)の治療薬「ボルテゾミブ」などが挙げられます(※12)。
2020年からは経営上の影響は軽微であるとしているものの、新型コロナウイルスのワクチンに関するパートナーシップを提携したことで、その存在を大きく示すことになったことも事実。モデルナ社から5,000万回接種分を輸入。また米ノババックス社と提携し、開発・製造をスタート。2022年初頭より摂取スタート予定の1億5,000万回接種分購入することで日本政府(厚生労働省)と合意しています(※13)。
また、武田薬品の経営の基本精神にはタケダイズムと呼ばれるものが存在します。
具体的には、誠実・公正・正直・不屈という4つの精神(※14)で、実際の業務への姿勢にも現れています。
武田薬品はMRに対して、量的に厳しい仕事を必ずしも求めていない一方で、「ベスト・イン・クラス(=各社の中でドクターに最も信頼されるMRであること)(※14)として誠実に働くこと」つまり「質」的に高度な仕事を求めています。
ある社員は「病院で使用する薬品を全て武田薬品のものに切り替えるとドクターに言われても、医薬品の副作用も考慮し『この医薬品で症状が安定している患者にだけ使用してください』と伝えた」と話しており、営利だけではなく患者さんのことを考え誠実に対応をしていることが伺えます(選考対策ページより)。
誠実に患者さんに向き合い医師と話し合いながら働く、質重視のカルチャーに魅力を感じる人は必見の企業です。
(※12)参考:武田薬品工業「主要製品」
(※13)参考:武田製薬「決算情報 2021年度 第2四半期決算情報 P.6」
(※14)参考:武田薬品工業「経営の基本精神」
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大塚製薬:「ものまねをしない」大塚製薬独自を追求するビッグベンチャー魂
業界2番手の売上収益を誇る大塚製薬の特徴は、(1)独創性を追求する自由な環境(2)トータルヘルスケアカンパニーの2つです。
(1)独創性を追求する自由な環境
「大塚にしかできないことを追求し、ビッグベンチャーカンパニーを目指す」という目標を掲げ(※15)、大塚製薬だからこそできることを追求しています。その一つが、今までになかった先入観を打ち破るような新しいカテゴリーの製品の創出です(※16)。
(※15)参考:財経新聞「大塚ホールディングスはビッグベンチャーカンパニー」
(※16)参考:大塚製薬 新卒採用サイト「採用メッセージ」
(2)トータルヘルスケアカンパニー
大塚製薬は「ポカリスエット」や「オロナミンCドリンク」などを主力商品としており、医薬品のみのメーカーでないことが特徴です。これらのニュートラシューティカルズ関連事業(※17)と、飲料などの消費者関連事業(※18)は、大塚ホールディングスの売上収益の約26%を占めています(※19)。
トータルヘルスケアカンパニーであることの魅力として、ある社員は「医薬品に絞っている他社とは違い、健康を損なわれている方だけでなく、健康の方がより健康になる製品も扱っている」と説明会で話しています。
同社では医薬品事業のMRとして採用後、キャリアの中でニュートラシューティカルズ事業の営業に回ることもあるようで、さまざまな角度から人々の健康を支えることができる特異な企業といえるでしょう(選考対策ページより)。
医薬品だけではなく、総合的に人の健康に関わりたい人にとっておすすめの企業です。
(※17)参考:大塚製薬「ニュートラシューティカルズ関連事業」
(※18)参考:大塚ホールディングス「消費者関連事業」
(※19)参考:大塚ホールディングス「2020年度有価証券報告書 P.34」
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アステラス製薬:幅広い海外地域での事業展開
アステラス製薬の強みは、海外展開地域のバランスの良さです。
売上収益の約37.9%がアメリカ、約23.5%がエスタブリッシュドマーケット(欧州・カナダ・オーストラリア)、約8.9%がインターナショナル(ロシア・中南米・中東・アフリカ他)と、特定の地域に偏らずとも海外売上比率が約77.7%にも上っています(※20)。
特に泌尿器領域に強みを持ち、前立腺がん治療剤「イクスタンジ」や、OAB(過活動膀胱(ぼうこう))に伴う尿意切迫感、頻尿などの症状を改善する治療薬である「ベタニス(日本)/ミラベトリック(米州)/ベットミガ(欧州・アジア・オセアニア地域)」などをグローバルに販売しています(※21)。
実際に働いている社員は「国内でトップシェアを目指しながら、海外にも事業を展開させていく必要がある」と語っており、入社後に海外と関わる機会が多いといえるため、海外で活躍したいと考えている学生や、国内外問わず名の知られている企業にてファーストキャリアを歩みたい学生におすすめの企業です(選考対策ページより)。
(※20)参考:アステラス製薬「地域別の売上高」
(※21)参考:アステラス製薬「アニュアルレポート2021 主要製品紹介 P.50」
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第一三共:老舗ブランドを持つ、信頼を集める医薬品メーカー
第一三共の特徴として(1)幅広い製品ラインアップが可能にする社会貢献性の高さ(2)グローバル創薬企業を目指すが挙げられます。
(1)幅広い製品ラインアップが可能にする社会貢献性の高さ
第一三共は「革新的医薬品を継続的に創出し、多様な医療ニーズに応える医薬品を提供することで、世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献する」を企業理念に掲げる製薬会社です(※22)。
そんな第一三共の魅力はなんといっても、幅広い製品ラインアップが可能にする社会貢献性の高さです。
実際、2022年3月時点で、医療現場からのMR評価No.1を8年連続で獲得し、日本の医療用医薬市場においてトップクラスの売上シェアを有しています。(※23)。これは自社開発品の継続的な上市・売上拡大を図り、幅広いポートフォリオでイノベーティブ医薬品事業を成長させ、質の高い営業力を生かして、良質な導入品を多く獲得していることが理由だと考えられます(※24)。
(※22)参考:第一三共「第一三共について」
(※23)第一三共株式会社「私たちの強み」
(※24)出典:第一三共「バリューレポート2021 P.19」
(2)グローバル創薬企業を目指す
第一三共は「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」を2025年ビジョンに掲げており(※25)、その実現に向けて今後、グローバル規模でのがん事業を加速させると考えられます。
がん疾患の市場が成長していることを背景に、2025年にがん事業だけで5,000億円の売上を目指しており(※25)、第一三共ががん事業に集中投資する姿勢がうかがえます。
(※25)参考:第一三共「第4期中期経営計画 P.33-34」
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平均給与比較
4社の平均年収・勤続年数は以下の通りです。
企業名 | 平均給与 |
平均年齢 |
平均勤続年数 |
武田 |
1077万円 |
40.2歳 |
14.5年 |
大塚HD |
992万円 |
44.1歳 |
3.6年 |
アステラス | 1051万円 |
43.0歳 |
17.1年 |
第一三共 | 1117万円 |
44.4歳 |
19.6年 |
※出典:2020年度有価証券報告書「武田薬品工業 P.11/大塚ホールディングス P.20/アステラス製薬 P.7/第一三共 P.8」
※大塚製薬のみ持株会社の大塚HDの有価証券報告書を参考にしているため、勤続年数が低めに提示されています。
※平均給与は千の位を四捨五入しています。
4社とも平均給与は1000万円前後。日本全体の40歳から44歳の平均年収が約476万円(※26)ですので、他の業界と比較しても圧倒的高水準だといえるでしょう。
(※26)出典:国税庁長官官房企画課「令和元年分民間給与実態統計調査結果 P.19」
職種別の選考対策
各社ともに職種別採用を行っており、各職種で求められる能力が違います。ここでは職種別に選考での重要ポイントについてお伝えします。
まずは以下の製薬業界の事業フローおよび職種関係図をご覧ください。
左3つが薬学部系のバックグラウンドを持つ研究・開発・生産職、右が文理不問の営業職であるMRです。それでは各々の選考ポイントをご紹介いたします。
研究・開発・技術職に必要な素養:薬学部のバックグラウンド・研究を何十年も行う根気
研究・開発・技術職に受かるために必要な素養は以下の2点です。
・薬学部のバックグラウンド……基本的に理系院生のバックグラウンドが募集要件
・研究を何十年も行う根気……新薬開発は数十年単位であるため、研究開発には常人離れした根気を持っていることが重要
大塚製薬の2022年卒の研究技術職の本選考エントリーシート(ES)では、自己PRについて深く問われたようです(本選考の体験談より)。
入社後も根気強く研究開発などに打ち込み、壁にぶつかっても立ち向かえる人間であることを示しましょう。
より詳しい選考対策は以下のページをご覧ください。
大塚製薬
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MR職に必要な素養:営業力・信頼される人柄・医療への関心理由
MR職に必要な素養は以下の3点です。
・営業力……多忙な医師の隙間時間に過不足なく製品の特徴を伝え、営業する力
・信頼される人柄……忙しい中でも医師が話を聞こうと思える人間性を持つか
・医療への関心理由……タフな仕事に耐えられる精神的な支柱があるか
特に営業力に関して、忙しいドクターに端的に説明できる「伝える力」を求められます。なぜならMRがドクターに対して商品を売り込むタイミングは、ドクターが昼食を取っているときや診察をしていないときであるため、ドクターは片手間に話を聞いていることが多いからです。
「グループディスカッション(GD)では他の学生に端的に自分の意見を述べ、相手が言った意見もわかりやすくまとめた」と内定者は述べているように、端的で無駄な時間のない説明能力の有無は、選考段階で見られているでしょう(選考対策ページより)。
より詳しい選考対策は以下のページをご覧ください。
武田薬品工業
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おわりに
いかがでしたか。特許の失効や医療制度変革などにより環境が激変する製薬業界。働いていて飽きない点も魅力だといえるでしょう。
以下、各社の選考対策ページです。ぜひご活用ください。
※注釈のない記載は、選考対策ページ(下記)の情報をもとにしています。
武田薬品工業
アステラス製薬
大塚製薬
第一三共
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各企業の選考のクチコミはこちらをご覧ください。
武田薬品工業
アステラス製薬
大塚製薬
第一三共
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