こんにちは、トイアンナです。
学部3年生、修士1年生の皆さんは、インターン選考で忙しくなる時期かと思います。
中でもコンサルティングファームでは、学生の能力を測るために特殊な選考を採用しています。今回は、ほとんどのファームで問われるケース面接について、身近な例題をもとに解説します。
<目次>
●ケース面接とは:課題解決のための思考力を問う質問
●思考の4ステップ:問題の整理→戦略→実行案→成果の概算
●1. 達成すべき目標や前提条件を整理する自分が「お金を稼げる分野」を知る
●2. フレームワークや理論をもとに戦略を立てる
●3. 戦略に沿った実行プランを考える
●4. プランごとの成果を概算し、打ち手を絞り込む
●大切なのは思考のプロセスを見せること
●考え方さえわかれば、ケース面接は怖くない
ケース面接とは:課題解決のための思考力を問う質問
ケース面接は、与えられた問いに対して制限時間内に打ち手を提案する面接形式です。出題内容は実際にコンサルで取り組むような経営課題が多く、企業は学生の問題解決のための思考力や取り組む姿勢から、現場で活躍する可能性を評価しているようです。
面接の時間は一般的に20〜40分で、以下のようなお題が課されます。
【設問】
あなたは飲料業界2番手の企業からコンサルティングの依頼を受けました。
以下の状況を踏まえ、どのような戦略提案を行いますか。5分間考える時間を与えるので、発表してください。
「自社」
・ソフトドリンクが強み
・値下げ競争に苦しみ、利益率が低い
「競合(業界トップ企業)」
・プレミアム価格のビール販売でトップを握っている
・チェーン系居酒屋との提携販売でシェアを大きく伸ばしている
※コンサル各社の出題例をもとにワンキャリア作問
ケース面接で重要なのは知識量ではなく、数字に裏付けされた実現可能な施策を筋道を立てて示すことです。その能力は多くの練習問題に取り組むことで鍛えられます。
今回は入門編として「学園祭の模擬店の利益を増やすには?」という身近な課題で、ケース面接の解き方を細かく見ていきましょう。以下の問題に、あなたはどう答えますか?
【設問】
あなたのサークルは学園祭でホットドッグを売り、その利益を運営費に充てています。
以下の情報を踏まえ、今年の模擬店の利益を今まで以上に増やす方法を考えてください。
・例年の販売価格は1本400円
・例年の売上は60万円で、うち利益となる30%を運営費に充てていた
・学園祭は1年に1回で、開催期間は3日間
・今年はホットドッグ販売を実行委員会に承認された後に、別のサークルもホットドッグを売り出すことが判明した
※コンサル各社の出題例をもとにワンキャリア作問
思考の4ステップ:問題の整理→戦略→実行案→成果の概算
回答は思いつきましたか? ケース面接は、以下の4つのステップで解いていきます。
【ケース面接のステップ】
1. 達成すべき目標や前提条件を整理する
2. フレームワークや理論をもとに戦略を立てる
3. 戦略に沿った実行プランを考える
4. プランごとの成果を概算し、打ち手を絞り込む
解説として、以下に回答例を紹介します。
1. 達成すべき目標や前提条件を整理する
具体的な提案を考える前に、目標として達成すべき数字や前提条件を明らかにします。今回の例題では、このように現状分析し、整理できます。
・目標となる例年の運営費は、売上60万円のうち30%の利益=18万円
・別のサークルもホットドッグを売るので、従来の方法では売上が減るだろう
・商品をホットドッグ以外に変更することはできない
2. フレームワークや理論をもとに戦略を立てる
設問を整理したら、どうすればいいか戦略を考えます。
販売戦略に関しては、「マーケティングの天才」と称されるジェイ・エイブラハムの理論(※1)を当てはめて完成する場合がほとんどです。
【ジェイ・エイブラハムの売上アップ理論】
・客の数を増やす
・客が1回あたりに使う金額を増やす
・客の来店頻度を増やす
これらの視点を今回の例題に当てはめると、以下のように戦略を立てられます。
(a)競合ホットドッグ店より集客できるようなアイディアを出す
(b)ホットドッグの単価と利益率を上げる
(c)購入頻度を上げる
3. 戦略に沿った実行プランを考える
次に、前提条件を踏まえて戦略を具体的なプランに落とし込みます。一例として、以下の3案が考えられます。
(a)競合ホットドッグ店より集客できるアイデアを出す
「プラン例:芸能人を呼んで売り子をしてもらう」
(b)ホットドッグの単価と利益率を上げる
「プラン例:トッピングを乗せて単価を上げる」
(c)購入頻度を上げる
「プラン例:『2本目から◯割引』キャンペーンを実施」
4. プランごとの成果を概算し、打ち手を絞り込む
最後に、3つのプランの中で最も合理的かつ適切な手段を考えます。まずはゴールの数字に立ち返りましょう。
・目標となる運営費は、売上60万円のうち利益30%=18万円
・別のサークルもホットドッグを売るので、今までの方法では売上が減るだろう
・商品をホットドッグ以外に変更することはできない
上記の戦略から、今回達成すべきゴールを再確認します。
今回はホットドッグの店舗が2つできるので、単純計算で売上がこれまでの半分になると仮定します。
何の戦略も取らなかった場合は、運営費も
「売上60万円 × 利益率30% ÷ 2 = 9万円」
と半減します。すると、運営費を18万円以上稼ぐために
「新たに9万円以上の利益を上げること」
が今回のゴールとなるでしょう。
では、いよいよプランを検証してみましょう。売上へのインパクトの大きさと実現可能性を検討するために、各プランでどのように売上を達成できるか概算していきます。
(a)競合ホットドッグ店より集客できるアイデアを出す:予算3万円以内なら実行可能
『プラン例:芸能人を呼んで売り子をしてもらう』
芸能人の接客で新規の客を1,000人呼び込めると仮定すると、1本400円のホットドッグなら
「400円 × 1,000本 = 売上40万円 × 30% = 利益12万円」
という方程式ができます。しかし、ここから芸能人のギャラを差し引く必要があります。最低限必要な9万円の利益を出すなら、
「12万円 − 9万円 = 3万円」
3万円以内の予算で、1,000本のホットドッグを売る芸能人を呼べる芸能人がいればOKです。
(b)ホットドッグの単価と利益率を上げる:販売数の見込みから達成は困難
「プラン例:トッピングを乗せて単価を上げる」
トッピングの価格を150円で原価50円とすると、1トッピング100円の利益です。
よって目標の利益9万円を達成するには
「9万円 ÷ 100円 = 900本」
にトッピングを付けて販売すれば目標達成です。しかし、今年は
「30万円 ÷ 400円 = 750本」
しか、ホットドッグは売れない見込みです。
9万円の利益目標を達成するために必要な900本の販売には届かず、ゴールを達成できません。
(c)購入頻度を上げる:合理性が低いため検討しない
「プラン例:『2本目から◯割引』キャンペーンを実施」
学園祭のような単発イベントで購入頻度を上げるのは難しく、利益率を下げてまで(c)案を選ぶ合理性は低いです。
そのため、この選択肢は検討しないこととします。
総括:(a)(b)(c)を検討して導き出した答え
すべてのプランを概算した結果、最有力なのは(a)案の「芸能人を呼んで売り子をしてもらう」となりました。
予算3万円がネックですが、「昨年のミスコン優勝者」や「学内で知名度の高いOB」などに候補を広げれば、実現可能性が高まります。
一見、客単価を上げる(b)案の「トッピングを乗せる」のが手堅いように見えて、実際に概算するとダイナミックなアイデアが成功の可能性が高いと分かります。
大切なのは思考のプロセスを見せること
ここまで解いても、面接官に「芸能人を呼べばいいと思います!」とだけ伝えたら一蹴されてしまいます。ケース面接で最も大切なのは、結論に至るまでの思考プロセスです。今回の場合、以下のように伝えることで自分の考え方の道筋を示すことができます。
【伝え方の例】
私は「ギャラ3万円以内で芸能人に販売してもらう」のが最も有効と考えています。
ここに至るまでに3つの戦略を想定しました。
その3つは「ホットドッグの販売数を増やす」「単価を上げる」「頻度を増やす」です。
まず、販売数を増やす戦略については……(以下、先述の計算式を説明)
ここまで論理的に説明できるよう、計算用紙には単語だけでもメモを残しておきましょう。計算式だけを残していると、いざ説明する場面でしどろもどろになるので注意してください。
考え方さえわかれば、ケース面接は怖くない
最後に、ケース面接のステップをおさらいしましょう。
【ケース面接のステップ】
1. 達成すべき目標や前提条件を整理する
2. フレームワークや理論をもとに戦略を立てる
3. 戦略に沿った実行プランを考える
4. プランごとの成果を概算し、打ち手を絞り込む
以下に、初心者でも取り組みやすい例題をいくつか紹介します。みなさんもぜひ解いてみてください。
【例題1】
あなたは出会い系アプリを作っています。すでに競合アプリが10人に1人の20代を参加させている状況で、業界に参入しつつ利益を最大化するにはどうすればいいでしょうか。
【例題2】
日本に来た観光客は、滞在中に17万円お金を使います(※)。あなたは消費額を拡大させる戦略を立てるよう、観光庁から依頼を受けました。どうすればいいでしょうか。
※コンサル各社の出題例をもとにワンキャリア作問
※出典:観光庁「訪日外国人の消費動向 P.13」
ケース面接対策の秘訣(ひけつ)は、何といっても回数をこなし、経験を積むこと。皆さんが自信を持って本番に臨めるよう、応援しています。
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※こちらは2016年8月に公開された記事の再掲です。