こんにちは、ワンキャリ編集部です。ワンキャリ編集部が総力を挙げて紹介する【最新版:業界研究】。
今回は知名度も採用のハードルも高いといわれる出版業界について解説します。その中でも大手出版社といわれる、KADOKAWA・集英社・講談社・小学館の4社。
「出版社に憧れる……でも、各企業で何が違うの?」という方に向けて、就活で使える出版業界のトレンドや各社の特徴、選考のポイントなどを説明します。
<目次>
●出版業界とは? 事業内容/提供サービスを解説
・出版業界のビジネスモデル
・出版業界の4つの流通ルート
●出版業界の動向
・活字離れと人口減少による「斜陽」傾向
・電子書籍の発達
・トレンドに合わせた、新規ビジネスモデルの構築
●出版業界の職種
・制作・校閲
・編集
・ライター
・デザイナー
・営業、宣伝
・デジタル推進
●出版業界大手4社の業績比較・ランキング(売上高/純利益/純利益率)
●出版業界大手4社の特徴・強み
・KADOKAWA:出版事業にとどまらない、総合エンターテインメント企業
・集英社:漫画に強みを持つ、趣味・娯楽性に重きを置く出版社
・講談社:創業110年の歴史を持つ老舗出版社
・小学館:児童書に力を持ちながら、独自の事業を持つ
●出版業界大手4社の社風の違い・制度
・KADOKAWA:さまざまな方面からエンタメに携われる
・集英社:にぎやかで個性的な人が多い
・講談社:真面目なエリートが多い
・小学館:落ち着きのある社風
●出版業界大手4社の平均年収・平均年齢・平均勤続年数
●出版業界で働く魅力・やりがい
・完成までの作業工程や関わる人が多い分、達成感が大きい
・自分が好きな作家や雑誌に関係する仕事ができることもある
・世の中に大きな影響を与える作品の制作に携われる可能性がある
・大手出版社を中心に、社員が少数で一人一人の待遇が良い
●出版業界大手4社の選び方
・自己分析で自分の強みや価値観を洗い出そう!
・情報収集ではワンキャリアの【選考対策ページ】を有効活用しよう!
・ワンキャリア公式YouTubeチャンネル『【公式】ワンキャリアライブ』を活用しよう!
・手間がかかる「業界研究」はワンキャリアにおまかせ!
・企業研究を効率よく進めたい方には「合格の秘訣」がおすすめ!
・就活の軸を見つけ、自分の価値観を整理しよう
●出版業界大手4社が求める人物像・選考対策
・出版業界が求める人物像
・出版業界の選考対策
▼業界理解が深まったら企業分析をしよう▼
出版業界とは? 事業内容/提供サービスを解説
出版業界とは、書籍や雑誌などの出版物を企画、制作、流通させる業界です。
この業界は、出版社が企画・編集を行い、出版取次が流通を担い、書店が消費者に販売するという仕組みで成り立っています。また、編集プロダクションも出版社の業務を補助する形で関与しています。
ここでは、出版業界のビジネスモデルについて詳しく解説します。
出版業界のビジネスモデル
出版業界は「出版社」「出版取次」「書店」の3つの大きな要素から成り立っています。
出版業界の収益モデルは、出版社が書籍の売上から利益を得る一方で、出版取次はその仲介手数料によって収益を上げる仕組みです。この3者の連携によって、出版物がスムーズに読者の手に渡る仕組みが構築されています。
また、出版社は、編集業務の一部を「編集プロダクション」と呼ばれる外部の企業に委託する場合もあります。これにより、出版社はさまざまなコンテンツを効率的に提供できる体制を整えています。

出版社
出版社は、書籍や雑誌などの出版物を企画し、制作から販売までを手掛ける企業です。出版業界では、総合出版社と特定ジャンルに特化した出版社の2つに大別されます。
総合出版社は、幅広いジャンルを扱い、大手出版社が多く存在します。一方で、専門分野に特化した出版社は、学術書や学習参考書、経済書、小説など特定のジャンルに集中しています。
出版社では、編集者が中心となって書籍や雑誌の制作・発行を管理し、校閲者が誤字や内容の確認を行います。また、営業職が販売促進活動を行い、最終的に書店やオンライン販売を通じて読者に届けられます。
大手総合出版社には、集英社や講談社、小学館などがあり、これらの企業は国内外で大規模な事業展開をしています。一方、国内には約3,000の出版社が存在し(※1)、その多くが社員数10名以下の小規模企業で(※2)、各社がそれぞれの強みを生かし、競争のなかで独自のポジションを築いています。
(※1)参考:日本図書館協会「出版流通と資料選択 P.6」
(※2)参考:奈良県立図書情報館「小さな出版社のつくり方」
出版取次
出版取次は、出版社が制作した書籍を全国の書店に届ける物流の要となる存在です。
取次の役割は、ただ書籍を配送するだけでなく、書店や出版社に対して市場の売上データや動向を提供することで、流通の効率化を支援しています。また、書店への販売促進活動を行うことで、書籍の売上アップをサポートすることも重要な業務の一つです。
出版取次は、大きく「総合取次」「専門取次」「電子取次」に分類されており、紙の書籍の流通を担当する総合取次や専門取次に加え、デジタル化の進展に伴って、電子書籍の流通を担う電子取次も存在します。電子取次は、出版社から提供されたデータを電子書店に送る役割を果たしており、スマートフォンやタブレットの普及により、その重要性が増しています。
代表的な出版取次会社には、日本出版販売(通称「日販」)やトーハンなどがあり、これらの企業が国内の出版流通の大部分を占めています(※3)。出版取次があることで、出版社と書店との取引がスムーズに進み、効率的な流通網が維持されています。
(※3)参考:NIKKEI COMPASS「出版取次業界 市場規模・動向や企業情報」
書店
書店は、出版物を消費者に直接販売する役割を担っています。書籍の販売方法は主に店頭での対面販売と、インターネットを利用したオンライン販売に分けられます。従来の街中にある書店に加え、近年ではAmazonや楽天ブックスといったオンライン書店が急速に成長しており、利便性を重視する消費者の間で広く利用されています。
さらに、書店は大学や公共図書館向けに学術書やデータベースの販売も行っており、専門的な書籍の需要に応える役割も担っています。
また、電子書籍の普及に伴い、電子書籍の販売も重要な業務の一つとなっています。スマホやタブレットを利用した電子書籍の流通は今後ますます増加する見込みです。
代表的な書店には、紀伊國屋書店や丸善CHIホールディングス、オンライン書店のAmazonや楽天が挙げられます。これらの企業は、紙の書籍だけでなく、電子書籍や学術的なデータベースも取り扱い、幅広い消費者ニーズに対応しています。
編集プロダクション
編集プロダクションは、出版社に代わって出版物の企画・編集・制作を請け負う業種です。
出版社と異なる点は、自社で出版物の企画や発行を行うことはほとんどなく、主に出版社から依頼を受けて業務を遂行することです。出版社の役割の一部を担う形で、ライティング、デザイン、編集作業、校正・校閲などを進めていきます。
編集プロダクションには編集者やディレクターが在籍しており、場合によっては外部のフリーランスのライター・デザイナー・カメラマンなどを起用して制作を進めます。編集プロダクションが関与する出版物の最終的な発行元は出版社となり、プロダクション自体が直接出版を行うことは基本的にありません。
編集プロダクションは、専門性の高い編集スキルや柔軟な対応力を持ち、出版社と連携しながら高品質な出版物の制作を支えています。
出版業界の4つの流通ルート
実は、出版物が読者の手元に届くまでには、出版社だけでなく、流通の方法やルートが複数あります。以下では、代表的な4つの流通ルートを紹介します。

出版取次→書店ルート
日本の出版業界で最も一般的なのが、出版社 → 出版取次 → 書店という流通構造です。 出版取次は、全国の出版社と全国の書店をつなぐ流通業者であり、在庫管理・配本・返品処理・代金回収などを一括で担います。
この流通方式は「委託販売制度」と「再販制度」の下で成り立っており、新刊が広く流通する一方で、売れ残った場合は返品できる体制になっているのが特徴です。
また、日本の出版市場では数千〜数万と多数の出版社、本屋がこの「ひょうたん型(砂時計型)」流通構造によって支えられており、これが紙の出版物の安定供給を支える基盤となっています。
このルートは、多数の書店を通じて広く流通させたい本や雑誌に適しており、伝統的かつ現在でも主流の流通形態といえます。
さらに、コンビニエンスストアにおいてある書籍については、販売会社を通して週刊誌や新聞などを届けます。
ネット書店ルート
近年では、インターネット通販やオンライン書店を通じて、出版社が直接または取次経由で販売するルートが多くなってきています。
このルートは、実店舗の書店に足を運ばずとも購入できる利便性が強みです。特に地方や在宅環境に住む読者、書店が近くにない読者にとって重要な流通手段となっています。
また、ネット書店では在庫管理や流通コストを抑えやすいため、小ロット出版や自費出版、マイナー作品なども流通させやすく、多様な読者ニーズに対応しやすい点も特徴です。
オンライン書店ルートの拡大は、出版のハードルを下げ、多様なコンテンツ流通を支える一因となっています。
教科書ルート
出版業界では、一般書だけでなく、教科書や学術書・学校採用品などを扱う流通ルートも存在します。これらは、特約供給や学校指定ルートを通じて、取次または特約業者経由で教育機関に納品されます。
教科書などは安定した需要が見込まれるため、出版社や取次にとっては「安定収益源」として重要な役割を果たします。
このルートは、一般読者向けとは流通構造や流通先が異なるため、出版物の種類によって流通戦略を分ける必要があります。
図書館ルート
書店やネット書店以外にも、公共図書館や学校図書館、研究機関などを通じて本が流通する「図書館ルート」があります。出版社や取次は、専門の流通業者を介してこれら機関に配本を行います。
図書館ルートによって、書籍は個人購入だけでなく公共サービスとして「読む機会の平等性」を確保することができ、多様な読者にリーチできる点が強みです。
この流通ルートは、利益追求だけでなく文化的・公共的な価値提供という観点でも重要であり、出版社にとっては社会貢献と読者層拡大の両立を可能にします。
