こんにちは、ワンキャリ編集部です。
ワンキャリ編集部が総力を挙げて紹介する【最新版:業界研究】。今回は、専門商社の中でも、就活生から人気を誇る伊藤忠丸紅鉄鋼、メタルワン、阪和興業、JFE商事の鉄鋼系専門商社4社について、各社の特徴を比較しながらお伝えします。
<目次>
●業界全体の傾向
●業績比較
●各社の特徴
・伊藤忠丸紅鉄鋼
・メタルワン
・阪和興業
・JFE商事
●平均給与比較
業界全体の傾向
鉄鋼業界全体として、人口増加や経済成長によって世界の鉄鋼需要は今後も伸びていきます。新型コロナウィルスの感染拡大の影響はありますが、2020年に一時的に落ち込む需要も、2021年には回復する見込みです。特に、粗鋼生産量が世界第3位の日本は、鉄鋼業界において欠かせない存在となっています(※1)。
一方で、国内の鉄鋼需要は減少傾向にあり、加えて中国企業の台頭や鉄鋼の原料である鉄鉱石の価格が高騰したことから、日本企業の収益を圧迫しています(※2)。新型コロナウィルスの感染拡大がさらなる追い打ちとなり、こうした流れから、国内鉄鋼メーカーの生産能力は低下し、企業の再編をはじめとした組織全体の構造改革を余儀なくされています。
例えば、2018年にはメタルワンが、国内市場における販売基盤強化の一環として、メタルワン西日本、メタルワン四国、メタルワン九州を統合しました(※3)。2020年にはJFEが、国内建設業界のニーズ拡大に伴い、JFE商事鉄鋼建材とJFE商事薄板建材を「JFE商事鉄鋼建材」として吸収合併しました(※4)。
(※1)参考:日本鉄鋼連盟「鉄鋼業界の将来性」(※2)参考:業界動向 SEARCH.COM「鉄鋼業界の現状と動向(2019年版)」
(※3)参考:メタルワン ニュースリリース「メタルワングループの国内販売基盤の強化に向けた西日本地域の拠点統合について」
(※4)参考:日本経済新聞「JFE商事、グループ内のJFE商事鉄鋼建材とJFE商事薄板建材が合併」
業績比較
専門商社の中でも主要4社である伊藤忠丸紅鉄鋼、メタルワン、阪和興業、JFE商事の売上高と営業利益を見てみましょう。以下のグラフは各社の業績です。
※出典:伊藤忠丸紅鉄鋼「2019年度 連結決算概況表 P.4」
※出典:メタルワン「2019年度連結決算概要」
※出典:阪和興業「有価証券報告書 2019年4月1日ー2020年3月31日 P.60」
※出典:JFE商事「決算公告 2020年3月期 第72期 P.2」
※数値は各企業の会計基準に準ずる。4社とも連結決算の数値
2019年度は、売上高、営業利益ともに伊藤忠丸紅鉄鋼がトップで、売上高ではメタルワンが2位、営業利益では阪和興業が2位となっています。
それでは、各社の特徴を見ていきましょう。
伊藤忠丸紅鉄鋼:強力な海外ネットワークを持つグローバルな鉄鋼商社
事業の特徴
伊藤忠丸紅鉄鋼(以下:MISI)は、2001年に伊藤忠商事の鉄鋼部門と、丸紅の鉄鋼製品部門が分社、統合し「総合商社鉄鋼部門の分割統合」というビジネスモデルの先駆者として誕生した鉄鋼総合商社です(※5)。
国内外に151のグループ会社を保有し、幅広い地域や分野で市場領域の拡大に向けてグローバル展開を加速させています(※6)。
2020年、新社長就任となったMISI。3月にはヤマト特殊鋼を子会社化し、特殊鋼分野において高精度の加工技術を生かした事業領域拡大と海外の市場開拓を進めています。先進国のみならず、新興国でもこれまで培ってきたノウハウやサプライチェーンを活用して新たな収益確保につなげていくようです。厳しい経営状況にあるものの、中期経営計画のポイントを「変化への対応」とし、新型コロナウイルス感染拡大に伴い組織の働き方改革を進めるとともに、経営判断も危機意識をいっそう高めていくといいます(※7)。
(※5)参考:伊藤忠丸紅鉄鋼「理念・コンセプト」
(※6)参考:伊藤忠丸紅鉄鋼「数字で紐解くMISI」
(※7)参考:産業新聞「『新社長に聞く』伊藤忠丸紅鉄鋼 塔下辰彦氏 流通業界構造改革 攻めと守りの構えで」
海外事業
MISIは、グローバル事業に強みを持ち、53カ国83カ所に拠点をおいています(※6)。他の鉄鋼商社に比べて多くの拠点を持つことから、海外収益比率は約6割を占めます(※6)。
強みについて、代表取締役会長は「日本や欧米等の先進国から、中国をはじめとするアジアの新興国、中南米や中近東、アフリカまで幅広くカバーしています。こうしたバランスの良さがグローバル経済の変化に対しても、迅速でしなやかな対応を可能にする当社の強みであると考えています」と述べています(※8)。
グローバル事業への注力ぶりは、研修や制度にも表れています。入社10年以内のBPグループ(総合職)社員全員の海外勤務をガイドライン化し、入社1年目の総合職社員を対象とした短期海外研修を実施しています(※9)。
(※8)参考:伊藤忠丸紅鉄鋼「TOP MESSAGE」
(※9)参考:伊藤忠丸紅鉄鋼「CULTURE GLOBAL EDUCATION」
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メタルワン:「変革と挑戦」で飛躍的進歩を成し遂げる、世界最大の鉄鋼総合商社
事業の特徴
メタルワンは、三菱商事と日商岩井(現・双日)の鉄鋼製品部門が統合し、2003年に誕生しました。連結売上高、取扱数量、グループ会社数など、多岐にわたる項目で常に業界トップクラスの規模を誇ります。
また、メタルワンには業界のリーディングカンパニーとして、利益の追求のみならず、重要資源である金属が生活と文化の向上に貢献し続けられるよう、金属産業に接する全ての産業・企業との連携によって新たな市場の創造を目指す「メタル・マーケットメーカー」というビジョンがあります(※10)。
2017年には新中期経営計画「成長戦略2018」を策定し、M&Aも含めた業態変革や重点事業分野を中心とした積極的な投資、関連企業共通のプラットフォームの形成による効率化への取り組みを始めました(※11)。
具体的な例としては、以下が挙げられます。
・住友商事グループとメタルワングループの国内鋼管事業を統合し、住商メタルワン鋼管を設立(※12)
・米国の穀物商社カーギルの鉄鋼事業部門を買収(※13)
・メタルワングループ100%出資のNicometalグループ3社を、吸収合併として統合(※14)
国内での利益向上が厳しい中、世界で競争力を得るため、国内のライバル企業とは手を組んでコストを削減、そして、海外企業に対しては買収や合併を進めています。首都圏再開発などにより、国内需要は高水準ですが、「業界全体の傾向」でも述べた通り、原料価格の高騰が課題である以上、この傾向はさらに強まると考えられます。
(※10)参考:メタルワン「メタルワンの強み」
(※11)参考:メタルワン「ビジネスモデルと戦略」
(※12)参考:メタルワン ニュースリリース「住商メタルワン鋼管設立について」
(※13)参考:日本M&Aセンター「メタルワン、Cargill, Incorporatedより米国の熱延鋼板加工・販売事業を買収」
(※14)参考:メタルワン ニュースリリース「Nicometalグループ統合と会社名変更について」
海外事業
内定者によると、社員は「海外単体売上で伊藤忠丸紅鉄鋼に負けている。全体の売上を守りつつ、海外売上でも世界トップを狙っている」と語っていたそうです(選考対策ページより)。このように、海外売上の向上を狙うメタルワンは、以下のように戦略地域を設定しています(※15)。
・重点戦略地域(日本、米国、メキシコ、タイ、インド)
・成長期待地域(中国、インドネシア、ベトナム)
・フロンティア地域(ブラジル、サブサハラ)
このため、海外経験の機会が今まで以上に増えていくと考えられます。
事実、メタルワンでは、B職(総合職)社員のうち約4人に1人が海外拠点や事業会社に駐在しています。世界各地にある約140のグループ会社に派遣するグローバルリーダーを求め、「新人海外研修」や半年〜1年ほどの「海外トレーニー制度」など積極的な海外研修制度を設けています(※16)。
(※15)参考:三菱商事株式会社 金属グループ 2017年 IR事業説明会「メタルワングループ 今後の成長に向けた課題・テーマ P.13」
(※16)参考:メタルワン「メタルワンの強み」
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阪和興業:独立系ならではの強みを生かし、幅広い事業を展開
事業の特徴
阪和興業は、鉄鋼をはじめ非鉄金属、食品、石油、化成品、木材、機械など幅広いビジネスを展開する、独立系総合商社です。
中でも、鉄鋼事業の売上高は、全体の50%近くを占めており、阪和興業の基幹事業といえるでしょう(※17)。
※出典:阪和興業「事業セグメント情報 2019年度事業別売上高」
同社は、国内有数の大型流通センターを各地に保有し、その在庫・加工機能を生かしたサービスを提供しています。独立系の特徴を生かし、国内外のあらゆるメーカーと取引でき、系列の制約のない仕入れを行える強みがあります。
国内有数の大型流通センターの保有・活用に加え、バリューチェーンの川上から川下まで全体をカバーする「そこか」(即納・小口・加工)戦略を推進しており、情報機能、在庫機能、加工機能など、付加価値の高いソリューションを提供しているところも、阪和興業ならではの強みだといえるでしょう(※18)。中期経営計画によると、国内鉄鋼事業戦略として2つの戦略を掲げています(※19)。
(1)高付加価値営業の推進。高度加工技術や自社のノウハウを活用した他社製品との差別化をはかる。特に、加工機能や図面積算の活用、戦略の再構築による物流改革に
(2)第2次「そこか」戦略。西日本を中心とした第1次「そこか」戦略に続き、第2次「そこか」戦略として東日本を含めた全国展開とグループ会社の効率化を行う。
(※17)参考:阪和興業「事業紹介 鉄鋼事業」
(※18)参考:阪和興業「統合報告書2019 P.43」
(※19)参考:阪和興業「中期経営計画(2020 年度-2022 年度) P.14」
海外事業
阪和興業は、海外事業について「東南アジアに第二の阪和を」戦略を推進しています。グループ会社のネットワークの活用や現地の有力な流通業者とのアライアンス、日系企業との共同進出などを通じて、海外のユーザーとの取引拡大を図っています(※18)。
今後の海外事業戦略としては、グローバル・パートナーシップにおいて協業の強化・推進を目標とし、汎用品輸出モデルから地産地消型ビジネスへの転回や、国内で成功した事業モデルをASEAN(東南アジア諸国連合)や中国など、海外へ移植します(※20)。
このように、阪和興業はアジア地域を中心に世界各地域のマーケットを開拓し、グローバルに多種多様な商材を流通させる機能を提供していこうとしています。
(※20)参考:阪和興業「中期経営計画(2020 年度-2022 年度)P.15」
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JFE商事:日本トップクラスの鉄鋼メーカーによる強力なネットワークを持つグループ会社
事業の特徴
JFE商事は、JFEスチール、JFEエンジニアリングと合わせて、JFEグループの一翼を担う鉄鋼専門商社です。
同社は総合商社のグループ会社であるメタルワンなどと異なり、鉄鋼メーカーのグループ企業です。鉄鉱石を原料に最終製品の生産までを一貫して行う、日本2位の売上高を誇る(※21)JFEホールディングスの製品を世界で販売しています。
原材料調達から加工・流通まで一貫したサプライチェーン、そして鉄鋼業界におけるJFEグループの世界的な知名度や顧客基盤、販売チャネルを踏襲した、安定したトレーディング事業の展開が強みだといえます。
2020年にはJFE商事鉄鋼建材とJFE商事薄板建材の合併、2019年にはカナダの電磁鋼板加工会社Cogent社を新たにグループに加え変圧器用鉄心加工において世界トップレベルの加工・流通機能を有し、事業領域の拡大に取り組んでいます(※22)。
このような強みを生かし、社長は「国内市場はもとより、海外では米州、中国、ASEANを重点地域と位置づけ、日本を含めた各地域が迅速に戦略を共有・連携することで、鋼材加工センターの展開や、お客様の最終製品により近い2次・3次加工製品の提供、原料や資機材を安定供給するための仕入ソースの開拓など、国内外におけるお客様ニーズに対し、スピード感を持った対応を目指しています」と話しています(※23)。
(※21)参考:業界動向 SEARCH.COM「鉄鋼業界 売り上げランキング(2018 - 2019年)」
(※22)参考:JFEホールディングス「JFE GROUP REPORT 2020 P.27」
(※23)参考:JFE商事「社長からの挨拶」
海外事業
米中貿易摩擦の長期化や新型コロナウイルス感染拡大の影響により、調達先の見直しやサプライチェーンの多元化を進めていく動きです。JFE商事としては、この逆境を企業全体の成長のチャンスと捉えており、日本、米州、中国、ASEANの「グローバル4極」ときめ細かな鋼材ネットワークを構築していることで、このような状況下でも更なる事業機会につながってくるといいます(※22)。
上述したとおり、カナダの電磁鋼板加工会社をグループに迎え、海外での活動領域の拡大、パートナーとの連携をはかり、新たなビジネスモデルを構築しています。
このように、JFE商事は、海外事業企画室と各地域拠点が連携し、企画機能を高めることで、事業基盤の強化を進めるとしています。
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平均給与比較
以下の表は、各社の平均年収をまとめたものです。
※伊藤忠丸紅鉄鋼、メタルワンは、有価証券報告書に記載なしのため「不明」と表記しています
企業名 | 平均給与 | 平均年齢 |
伊藤忠丸紅鉄鋼 | 不明 | 不明 |
メタルワン | 不明 | 不明 |
阪和興業 | 807万円 | 37.6歳 |
JFE商事 |
1097万円 | 44.2歳 |
※出典:2019年度有価証券報告書「阪和興業 P.10/JFE商事 P.14」
※JFE商事のみ持株会社のJFEホールディングスの有価証券報告書を参考にしています
※平均給与は千の位を四捨五入しています
5大総合商社の平均給与が約1496万円(※24)ということを考えると、比べてやや低くはあるものの、平均給与が1000万円に達する企業もあることから、専門商社も高給の業界だと言えます。
(※24)参考:ONE CAREER「【業界研究:商社】5大総合商社『三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅』のメイン事業や社風を徹底比較!」
おわりに
専門商社は総合商社に比べて採用人数が少なく、早い時期から入社1年目から海外経験や大型案件を任せてもらえるケースもあります。
今まで総合商社しか見ていなかった人も、この記事を機に「専門商社も受けようかな」と思っていただければうれしいです。
詳しい選考ステップや合格の秘訣(ひけつ)は、下記の「選考対策ページ」を参考にしてください。
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