就活において、自己分析は絶対必要な基礎
自己分析とは、過去の経験・エピソードから「自分がどういう人間で、何ができるかを言葉にするプロセス」のことです。自己分析はいわば就職活動の基礎であり、無視して通り過ぎることはできません。
しかし「自己分析のやり方がわからない」のが就職活動中の学生共通の悩み。「企業にPRできるような長所がない」と思ったり、弱みを補っていないまま伝えてしまったりと、思わぬ落とし穴もあります。
そこで今回は、自分の過去の経験から「得意なこと」「需要があること」「好きなこと」の3軸を用いて強みと弱みを見つける方法を紹介します。
自己分析はナゼ必要なの?:企業の面接官が知りたいのは「所属や経験」ではなく「価値観」
突然ですが、初対面の学生たちで飲み会を開いたと想定してください。「1人ずつ自己紹介をお願いします!」と幹事が言いました。さて、自分は何を言いますか?
「私の名前は○○で、xxx大学の文学部3年生です。テニスサークルに入っていた経験があり、ゼミではフランス文学を勉強しています」
こんな自己紹介の方法が、一番多いと思います。
これは、飲み会で言うなら問題ありませんが、「就職活動」には全く適していません。というのも、この自己紹介は「自分の所属」を伝えているにすぎず、企業が知りたい「自分がどういう価値観を持っているか」や、「自分がどんな仕事に向いているか」を全く伝えていないからです。
私たちは普段、自分の価値観を深く考えていません。しかし就職活動では、企業はあなたの価値観を何より重視します。そのため、就職活動では「自分が何を大事に思っているか」を過去の経験からおさらいする必要があるのです。
企業が強みと弱みを聞く理由
企業が強みと弱みを聞く背景に、価値観を知りたい以外の理由も挙げられます。ここでは2つ理由を紹介します。
・入社後の姿が想像しやすくなるから
強みや弱みを聞くことで、入社後に強みをどう生かせるか、そして弱みをどう補えるかが想像しやすくなります。この学生が入社したら活躍できるかを判断する材料の一つになります。
・客観的な自己分析力があるか見極めたいから
企業は面接を通じて伸び代がある学生を求めています。それを評価する指標の一つが客観的な自己分析力です。成長するために必要な能力や経験を導き出せる学生は、入社後の伸び代があると判断されます。
自分の強みを見つける4ステップ:「得意」「好き」「需要」を明らかにする必要がある!
ここからは、自己分析の具体的な方法について、ステップごとに紹介します。
必ずしもこの方法で進める必要はありませんが、進めやすい方法の1つとして、参考にしてみてください。
1. 紙とペンを用意する
まず、紙とペンを用意します。
2. 3つの円で重なるベン図を描く
まず紙いっぱいに、以下のようなベン図を描く必要があります。ベン図とは、円を重なり合わせて作る図のことです。
それぞれの円には、自分が「好きなこと」「得意なこと」「需要があること」と記していきましょう。
3. それぞれのベン図に、当てはまる「自分の特性」を書いていく
図ができたら、それぞれの円に当てはまる自分の特徴を書いていきましょう。
例えば自分が絵が得意で、文化祭でポスターデザインを担当した経験があるなら「得意なこと」「需要があること」に加えます。本を読むのが好きなら「好きなこと」だけに書きましょう。
一見難しく思える「需要があること」は、シンプルに考えてください。例えば、「お金を稼げるスキル」は需要の有無がわかりやすいですが、それほど難しく考える必要はありません。自分が誰かに何度かお願いされたことや、「○○さんは得意そうだからお願いしたい」と過去に言われたことを考えて、まずは書き出してみてください。
ここで大切なのは、自分を人と比べないことです。どんな長所にも、上には上がいます。自己分析の目的は、あくまで自分の中にある特徴を見つけることです。「自分の中で得意なこと」で構いません。
4. 3つの軸が重なる特徴をピックアップ
ベン図が埋まったら、円が3つとも重なり合う部分に書いた特徴をピックアップしましょう。この過去のエピソードから考えた「好きなこと」「得意なこと」「需要があること」の全てに合致する部分が「就活の自己紹介で使える、自分の強み」と言えます。
例えば自分が「海外サッカーオタクで、元体育会サッカー部の理系学生男子」だとしましょう。そして、ベン図の「需要がある」×「好き」×「得意」が重なる部分に、「サッカーの試合内容やポイントを初心者にもわかりやすく伝えること」とあったとします。サッカーを評論するには、そもそも自分がかなりのサッカー好きである必要があります。自分がサッカー好きではないなら、「需要がある」レベルまではいきません。加えて、各選手が複雑な動きをする中で、プレーの意図を考察するという複雑な思考が要求されます。ここから、「自分がやりたいと思う仕事に対しては120%のアウトプットを出しそう」、「複雑な物事も自分の中で理解し、整理することでわかりやすく伝える強みがありそう」など、長所の候補をあぶり出すことができそうです。
このように「この特徴がある人は、どんな人材といえるか」と想像を膨らませる必要があり、あなたの強みを言葉にして説明できるようになります。
3つ重なる自分の特徴が見つからない人は?
需要があるか?を重視して考える
全ての人に3つの条件が全てそろうわけではありません。もし3つ重なる特徴がなければ「需要がある」×「好き」か「需要がある」×「得意」の組み合わせを自分の強みとして考えましょう。需要は、(自分の実際の能力)≧(人があなたに期待する能力)となることで生まれます。仕事は他者との関わりの中で進むものだと考えると、「好き」や「得意」以上に、「需要がある」ことは重要な項目です。
もし「好き」×「得意」な要素ばかり集まってしまった場合は「これが自分の仕事になる可能性はあるだろうか?」と、需要につながる可能性を考えてみてください。
自己分析ツールや性格診断を使ってみる
これまでの手順を追っても、重なる特徴を見つけられない方もいるかと思います。そのような方は、好きなこと、得意なことの客観視が足りていない可能性が高いです。その場合、自己分析ツールを利用することをおすすめします。
自己分析ツールは、自分の好きなこと、得意なことを客観的に捉える手助けをしてくれます。
おすすめの自己分析ツールや使い方は、こちらの記事で解説しています。
・【自己PRの作り方】アプリやツールを使った「3通りの自己分析」で長所を見つけ、面接を突破しよう
自分の強みは弱みに言い換えることができる
強みがわかったら、次は弱みを見つける自己分析に進みます。
実は、強みがわかったら弱みを見つけるのはそれほど難しくないです。なぜなら、強みと弱みは表裏一体のことが多いからです。強みを裏返した弱みを伝えることで、強みと弱みに一貫性を持たせることができます。
例えば、「細部への注意を怠らないよう正確に作業をする」という強みは、「作業に時間がかかってしまう」という弱みに言い換えることができます。このように、強みと弱みに一貫性を持たせることで、説得力も増すでしょう。ただし、このやり方は一般的な手法として定着しているため、他の学生との差別化が弱くなってしまいがちです。
差別化できる弱みの見つけ方や伝え方の詳細はこちらの記事で解説しています。
・【面接対策】短所に関する質問の意図と正しい回答とは?例やエピソードを交えて解説!
自分の特徴に合う過去の経験・エピソードを思い出す
これで「就職活動で伝えやすい、自分の特徴」が抽出できました。最後に、自分の特徴の裏付けとなる過去の経験・エピソードを思い出しましょう。企業の面接官に納得してもらうためにも、就職活動では自分の強みを過去の経験やエピソードとセットで伝える必要があります。自分の過去の経験をどんなささいなことでも構わないので、空きスペースへ書いてみてください。
「就職活動で伝えやすい自分の特徴」と「自分の特徴を裏付ける過去の経験リスト」が用意できたら、自己分析は完了です。
強みや弱みを伝えるコツは?
自分の強みと弱みがわかったところで、面接やエントリーシートで企業に伝えなければ意味がありません。ここでは、強みや弱みを伝えるコツを紹介します。
共通のコツ(1):結論(自己分析の結果)を先に述べる
強み弱みに共通していえるコツは、結論から伝えることです。
「私の強み/弱みは◯◯です」と結論を最初に伝えましょう。冒頭で伝えることで、伝えたいこととと根拠が結びつきやすくなります。
共通のコツ(2):具体的なエピソードを入れる
続いてのコツは、具体的なエピソードを含めることです。強みや弱みに説得力を持たせるには、裏付けとなる根拠が必要です。根拠として具体的なエピソードを含めることで、説得力が増します。
「自分の特徴に合う過去の経験・エピソードを思い出す」で挙げたエピソードを用いるのもいいでしょう。
強みを伝えるコツ(1):応募先の企業が求める能力を意識する
強みを伝えるときのコツは、企業が求める強みを意識することです。
企業が求めていない強みをアピールしても、企業のニーズを満たすことができません。企業のニーズと自分がアピールする強みが大きく離れていないか注意しましょう。
一方で、企業のニーズに合わせて強みを変えすぎるのは要注意です。選考はあくまで学生と企業のマッチングです。不用意に企業に合わせるのは本質的ではなく、入社後、苦労することになるかもしれません。
強みを伝えるコツ(2):応募先の企業で生かす方法を伝える
強みを伝えるときの二つ目のコツは、強みをどう生かせるのかを伝えることです。
企業のニーズを満たすだけではなく、強みをどう生かし、貢献できるのかを伝える必要があります。企業の業務内容を理解し、具体的にどのような場面で強みを生かせるのかを自分の言葉で伝えましょう。
より具体的に伝えることで、入社意欲や企業研究の質の高さをアピールすることができます。
弱みを伝えるコツ(1):弱みの対処法を伝える
弱みを伝えるときのコツは、改善のための取り組みを伝えることです。弱みは克服、または補っていないとただの欠点になってしまいます。
弱みに向き合い、改善に向けて努力を惜しまなかったエピソードを伝えるようにしましょう。今後壁にぶつかっても、改善しようと努力できる人材だと伝えることが大切です。
弱みを伝えるコツ(2):対処した結果どうなったかを伝える
弱みを伝えるときの二つ目のコツは、最終的にプラスになる内容を伝えることです。弱みがわかっていても、補うことができなければ意味がありません。
弱みを補うまでのプロセスと結果を伝えなくては、面接官は「克服できたのか」を判断できません。弱みが弱みのままと伝わることがないよう、プラスの内容で終わるよう意識しましょう。
強みと弱みの例を紹介!
強みと弱みの見つけ方と伝え方がわかっても、自分の強みや弱みが思い浮かばない方もいるかと思います。そのような方に向けて、強みと弱みの例を紹介します。
今回は、表裏一体になっている強みと弱みをいくつか紹介します。
・計画性がある強み→動き出しが遅くなる弱み
・細部までのこだわりが強み→時間がかかってしまう弱み
・一つのことへの集中力が強み→興味がないと力を入れられない弱み
・目標を決めたら最後まで努力する強み→柔軟性がない弱み
自己分析は「時間をかけて考える」
ここまで自己分析の方法をお伝えしました。自己分析は就職活動の選考で忙しくなると、ないがしろにされがちな部分です。ですが、誤った方法での自己分析は、「自分が就いた仕事が、実は自分の苦手なことだ・自分の強みを生かせない」と就職後に気付き、結果として仕事が全く楽しくない……といった悲劇につながります。
忙しいときこそ、自己分析に時間をかけて「自分が本当に好きなことって何だろう?」「自分の長所だと思っていたけど、本当にそうかな?」と自分の価値観を深めていってください。
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※こちらは2020年7月に公開された記事の再掲です。