能力的には非常に優秀でも、なぜか就職活動でつまずいてしまう人はわりと存在します。
僕も当時は理由が全くわかりませんでしたが、会社を経営し実際に採用活動をする側になって、少しずつ理解できてきました。これから挙げる内容は基本的なことばかりですが、いずれも非常に重要なことだと思います。僕自身の失敗談も含めて、ぜひ「なぜか落ちる」就活生にならないためのチェックリストとして使っていただければと思います。
<当てはまってない?「なぜか落ちる」就活生のNG行動> ●常識を疑われてアウト! 身だしなみと持ち物編 ・ペンと手帳を持ち歩かない ・靴やスーツがくたびれている、着崩れている ●魅力が伝わらずアウト! 表情・身振り編 ・表情が硬い ・受け答えが早口、もしくは食い気味 ●意外な落とし穴でアウト!? 緊張しすぎ・緊張不足 ・緊張でガチガチ ・深呼吸するとかえって緊張する ・面接中に「ダルいな」と思ってしまう ●おわりに
常識を疑われてアウト! 身だしなみと持ち物編
ペンと手帳を持ち歩かない
かつて僕の会社でも、幹部社員の採用をしたことがあります。つまり、会社の未来を占う正社員としての採用です。中小企業ではありますが、飲食+貿易というちょっと面白い業態だったので、かなりの人が面接にやってきました。その中で僕が「これはダメだ」と感じたのが、この点でした。
面接は就労条件を刷り合わせる交渉の場です(特に、僕の経営していたような零細企業にとっては)。そこに、会話を記録するためのペンと手帳を持ってこないのは、常識の面でかなり致命的です。しかし、そういう人は意外に多いのです。
そして、実を言えば僕も「ちょっと常識には欠けていそうだけど、経歴が強そうだから雇ってみるか」という判断で大失敗をしたことがあります。もちろん「常識はなくても有能な人」は存在します。一方で、「常識がなくては仕事にならない」こともたくさんあるのです。そして、この傾向は大企業ほど強くなるでしょう。中小零細や中途採用なら「多少問題はあっても使えるなら雇う」という判断はありえますが、社会常識に欠ける人、ましてや新卒を雇いたい大企業はほとんど存在しないでしょう。
靴やスーツがくたびれている、着崩れている
「靴が磨かれていない」「スーツが皺だらけ」「ネクタイの結び方がおかしい」なども見られています。そして、とても残念なことですが、採用面接のたかが1回で身だしなみに気を使えない人は残念な結果に終わる場合が非常に多かったです(何を隠そう、この欠点は僕自身にも大いにあり、僕はわりとだめな人です)。
さらに注意すべきこととして、就職活動が上手くいかずにモチベーションが下がってくると、この欠点が目立ってきます。いわば「就活ゾンビ」化です。髪はボサボサ、スーツはヨレヨレ、靴はグチャグチャを通り越して靴先が反ってしまっている。持ち物はどんどんいい加減になり、就職活動を始めるときに買った格好良いペンはどこかに消えてしまう。僕は夏の終わりまで就職活動を続けましたが、就職戦線も半ばを過ぎると周囲の「ゾンビ」率はどんどん上がっていきました。そうなると「完全にアウト」です。僕自身も、最終面接でスーツの襟がひっくり返っているのを指摘されて落ちたことがあります。これは気をつければ回避できることですので、ぜひとも強く、強く、強く意識することをおすすめします。「人は見た目が9割」という話を僕は真実だとは思っていませんが、それでも見た目はとても重要なのです。
魅力が伝わらずアウト! 表情・身振り編
面接では志望者の語る内容だけを聞いているわけではありません。むしろ作り込めてしまう話の内容より、表情や身振り手振り、発話の抑揚、レスポンスのタイミングなどの方が、重視されることも多いでしょう。しかし、笑顔がギクシャクしている、発話がモタつく・あるいはレスポンスが早すぎるのは、ある意味当然のことなのです。「面接」という場に慣れていないのですから最初から自然にやれるわけがない。もちろん、一部の才能と自信に溢れる人は別ですが、たいていの人は「練習しなければできない」のです。
表情が硬い
まず、表情についてです。これは「練習しなければできない」と腹を括ってください。相手に与えたい印象を身体的に表現するのはとても難しいのです。しかし、人は話の内容よりもこちらを重要なメッセージとして受け取っています。笑顔を作るのは「技能」です。あるいは、真剣に思考しているように見せるのも一つの技術です。
受け答えが早口、もしくは食い気味
会話のレスポンスは「早すぎる」人の方が、遅い人よりよりも損をすると思います。面接官からの質問に食い気味に返してしまう人は結構存在しますし、残念なことにこのタイプの人は発話内容もコケていることが多いと思います。僕もかつてはそうでした。考えこんでしまって、あるいは緊張で言葉が出なくて話が止まってしまうのは、それほど大きなマイナスではありません。「すいません、少し考えさせてください」と伝えて30秒ほど長考したくらいで印象は悪化しません。
それでもなぜか人は急き立てられて早口になってしまいます。これは、もしかするとテレビなどの影響かもしれません。語るべき内容を決まった時間内で話し、質問に間を空けずレスポンスする「しゃべり」の専門職の皆さんは、「早くて正確」な語りの技術を身につけています。しかし、こんなものビジネスシーンでは全く必要ありません。ゆっくり、正確に、相手の話をよく聞いていることが伝わるように返答する。それだけを意識すればいいのです。あなたの周囲の「偉いオッサン」を想像してください。あいつらのしゃべりは、別に面白くも流ちょうでもないでしょう。あれでいいのです。
「自然な自分」を演出するのは、そもそもとても不自然なことです。何も考えたり意識せず、訓練もしなければ、たいていの人の話し方は「不自然」になってしまいます。練習を重ねた上でしか「自然な発話」はできません。鏡の前で何度も練習しましょう。必ずできるようになります、大丈夫です。
意外な落とし穴でアウト!? 緊張しすぎ・緊張不足
緊張でガチガチ
採用面接、緊張しますよね。普通はすると思います。しかし、ガッチガチでマトモにしゃべれない人が合格することはまずないでしょう。「見知らぬ人とビジネスの会話をする」というのは、大学生の大半が経験したことがないと思います。採用面接もある意味ビジネスの交渉です。慣れなければガッチガチになってしまうのは当たり前です。
これの解消策ですが、心療内科で安定剤を処方してもらうという大技があります。あまりこの場にふさわしくない薦めかもしれませんが、正直に言って僕はこれより効果のあるハックを知りません(編注:自己責任の上、医師の診療のもとで処方を受けてください)。
次に効果があるのは身体を動かすこと、声を出すことです。理想を言えば「身体を動かしながら大声で歌う」のが一番効き目があります。僕の知り合いには、緊張する営業先に向かう車の中でひたすら大声で歌う人もいます。しかし、現実的には不可能な場合が多いでしょう。緊張する中で待機させられ、急に呼び出されて面接が始まることが多いと思います。では、この場合どうやって面接に向かう精神状態を作ればいいのか。僕は「ルーティン」を採用しています。何でもいいのですが、緊張を伴う場面の前に決まった動作をすることで、「これを行えば精神が整う」という条件付けを作るのです。
僕は「指のストレッチ」をしています。片手の親指から小指までをもう一方の手で反らせて引っ張って伸ばす動作を2回繰り返します。そして、最後に肩を一回しする。これが僕のお気に入りのルーティンです。動作と精神状態は非常に強く紐付けることができます。「これをやれば大丈夫」という自分なりのルーティンを作って、ことあるごとに行うようにしてみてください。ゴルフやダーツなどのメンタルスポーツを行う人が採用する手法ですので、非常に効果があります。
深呼吸するとかえって緊張する
ルーティンといえば「深呼吸」も非常にメジャーですが、僕はこれ、ちょっと気をつける必要があると思います。慌てて深呼吸をすると、息をすばやく深く吸って一気に吐き出すのを繰り返すことになります。これはパニックから起きる過呼吸の対処としては「最悪」で、かえって精神的な混乱を助長してしまう作用があります。
ではどうすればいいか。僕が精神的不調からくる呼吸の乱れに悩んでいた頃、精神科医に教わったのは、「まずは呼吸を数秒止める」ことです。その後ゆっくり息を吐き切ってください。次にゆっくり浅く吸った息を、吸った倍以上の時間をかけてゆっくり吐き出してください。これが精神を落ち着かせる呼吸です。重要なのは「吐く」方です。しかし、これは僕自身もそうだったのですが、慌てて深呼吸をすると強く吸ってもっと強く吐き出すという呼吸になりがちです。あれは、本当に最悪です。吸気は浅い方がむしろ良いのです。ちょっと今すぐ試してみてください、実感が得られると思います。「スー! ハー! スー! ハー!」みたいな深呼吸はとにかくやめましょう。
面接の場でメンタルがグチャグチャになる人は一定数います。また、就職活動の不振が続くと精神はより不安定になるでしょう。少しでも安定させる努力が必要です。必死で練り込んだESも、考えつくした受け答えも、メンタルの不安定で全ては無に帰してしまいます。工夫を重ねて、ベストのコンディションを目指しましょう。
面接中に「ダルいな」と思ってしまう
一方、「緊張不足」も良いことではありません。これも面接を繰り返すうちにありがちですが、緊張が維持できなくなることがあります。面接中に集中が途切れて「ダルい」という感情が頭をもたげた経験のある人もいるのではないでしょうか。程よい緊張は集中に直結します。そして、この問題も「緊張し過ぎ」と同じ方法で対応可能です。ルーティンでよい高い集中力を発生できる精神状態に持っていってください。
ルーティンは繰り返せば繰り返すほど、成功体験を積めば積むほど効果を増します。ぜひ、導入してみてください。コストも時間もゼロに近いですから、やって損だけはないことを保障できます。
おわりに:基本を大事にしましょう
整った身だしなみで必要な準備を行い、自然な声や身振りで、安定した精神状態で集中して受け答えする。これは一見当たり前のようで、とても難しいことです。細かい面接のテクニックより、まずはこちらを万全にしたほうが僕は良いと思います。なぜかというと、これらの基本が全部できている人は、僕の会社の面接に一人たりともいなかったからです。
基本というのは忘れられがちなもので、しかも簡単ではありません。僕自身も自信があるわけではありません。しかし、このチェックリストが全てバツだったら、面接には99%落ちてしまうでしょう。努力して損はありません。これだけのことが就職活動当時の僕にできたら、あれほど苦労をすることもなかっただろうと心から思います。あなたの就職活動の成功を、僕は心から祈っています。やっていきましょう。
※こちらは2018年1月に公開された記事の再掲です。